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「…て訳で、創造主様は、この星に世界樹ユグドラシル様を埋めた訳。だからね、世界樹ユグドラシル様が、人族のせいで、枯れてしまわれて、創造主様は、激おこプンプン。もうこんな星は知らん!!ってこの星を放置しちゃったの!!!だから、精霊王様達が大慌て!世界樹ユグドラシル様の復活に力を貸してくれる魂を探して探して、加護を与えてみるんだけど…なかなか上手くいかないの。なんで人族って喧嘩ばっかりなの?なんで感じないの?この星が泣いてるのにさ。可哀想なくらい鳴き叫んでるよ?」
ふわふわ漂って、私に、この星の誕生から世界樹ユグドラシル様の創生と終焉を伝えてるのは闇属性の精霊ダーク。
双子月が輝く真夜中に、気分屋のダークに叩き起こされ、眠気まなこに聞かされた話に、私は眼を覚ましたの。
うん。大切な話だよ。間違いなく。なんで叩き起こしてまで、私に伝えるんだ?
よほど私が不思議な顔をしてたのか、ダークは、私の顔の真正面でピタリと止まった。
「この星が、悲鳴をあげてるよ。僕達には、よく良く聞こえる。もう限界だ!!って。助けてくれ!!って。でね…最近、世界樹ユグドラシル様の小さな鼓動が聞こえてくる。まだ弱いから消えそうなの。ねぇマリアンヌ助けてよ。」
「どうやって??」
「解んない。僕まだ生まれてそんなに経ってないんだ。でもね、僕には解る。マリアンヌがきっと、精霊王様達が待ち望んでた、世界樹ユグドラシル様を復活させてくれる人族だって。」
ふむ。話が大きすぎてなんも言えないわ。
大体、私、一回は処刑されてる悪女なのよ?自分で言うのもなんだけど、精霊の加護が強いはずなのに、なんで断罪されたのかしら?ってくらい、幸薄いのよ。いや悪女らしい事なんて、そんなに、やってないんだけど。彼女には、まぁ、色々確かにやったけどね。
だけど…真剣に人の形に擬態して伝えてくるダークの顔を見てるとね…。なんとかしてあげたくなる。
「ねぇ。ガルシア殿の隠し部屋を探させたいのは、その為なの?」
「うん。ガルシアはね、探求者。好奇心で、沢山の原書を買い占めた。その中に、創造主様が気まぐれで書いたこの世で一つしかない原書がある。マリアンヌならきっと読み込む事が出来る。しかも使えるかも知れない。だって、マリアンヌ、創造属性持ってるんだもん。」
創造属性ね…。確かに持ってるわ。使った事ないけれど、希少な上特殊な属性。だから文献が無いと前世の時に言われたの。
「わたしに出来るか分からないけど、出来る事はするね。時間の猶予は全く無いの?」
「人族の時間で後5年くらいだよ。」
「そう。わかった。まずはガルシア殿の隠し部屋を探しましょう。あとね、私、創造属性使った事無いわ。」
「知ってる。創造主様の原書見つけたら解決するから大丈夫!!」
「わかった。とりあえず、私、寝るよ?まだ寝ないとリリーアンヌに怒られちゃう。」
「うん。おやすみ!!」
私が了承したからか、気分屋のダークは、さっさと、人の形の擬態を、解いてどっかに行ってしまったの。
明日は、習い事休みだけど…家捜しだな。ウトウトしながら私は深く眠りについた。
ーーーーーーーーーーー。
「はい!じゃあ張り切って探してね!」
朝食を食べて、レイラとリリーアンヌと離れ、いそいそと図書室に来た、私に、元気良く話すのはダーク。
「ヒントある?」
「鑑定魔術の魔力探知術を応用して!」
言われた通り鑑定魔術を目に貼り付け、所載鑑定に魔力探知を複重させる。すると、図書室に張り巡らしてある、複数の魔術が目視出来た。
一つ一つ丁寧に確認するの。
防水・防火・防腐・防魔・防物・耐魔・耐物。等々、細かく掛けられてる魔術達の複雑に絡み合い網目状に重なる様子は、繊細な刺繍の柄みたいで美しい。
コツリ。コツリ。歩くたびになる靴音。
そういえば、マーリン先生の蔵書にも書いてあったわね。シンプル且つ洗練された魔術は、美しい絵画のようだと。
グルリと図書室を一周してから私は顔を顰めた。美しい魔術達は沢山確認出来たけど、隠し部屋に繋がるものは見当たらないわ。
ヒントを出して、ダークはどっか飛んでっちゃったし。そういえば、ガルシア殿も闇属性を有する御仁よね…。
所載鑑定を闇属性感知に切り替えてみる。
ボンヤリと美しい魔術達は、視界から消え、入れ替わるように図書室の壁全体に、ビッシリと複雑な魔術式が現れたのよ。
「解読しろって事?」
ヒクリと喉が引き攣るわ。ガルシア殿…。貴殿は間違いなく変人だ。こんな仕掛けを施した理由が知りたいわ。
若干遠い目になりながら、私は、複雑な魔術式を解く為に、頭をフル回転させたのよ。
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