ノワール大公家の図書館

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ノワール大公家の図書館

ノワール大公家には二つの図書館がある。 一つは母屋にある図書館で、膨大な数の蔵書数を誇り、噂では皇都図書館と蔵書数は変わらないらしい。歴代のノワール大公家の皆様は読書家が多く、外交を司るお家柄、公務で赴いた先の他国にて蔵書を買い占め帰国する慣習があり、他国の書も多数有しているそうだ。因みに、お子様方の学習室を兼ねている。 一つは離れにある小ぢんまりとした図書館と云うより図書室に近い。 こちらには何代か前のノワール大公家の嫡男が、趣味で集めた様々な魔術書及び各国の法令教本等、実にマニアックな蔵書ばかりとなっている。余りにもマニアックな物ばかりなので、大公家の方が、こちらにいらっしゃる事はほぼない開かずの間に近い場所である。 私には、宝の宝庫にしか感じられず、時折図書室の中に忍び込み、精霊達に、魔術書の解説をお願いしてたりした。他国の魔術書・有名な著名な魔術師の魔術書・錬金術書・各地のダンジョンマップまで、多岐に渡り揃えてあるのに気付いた時は、これを集めた嫡男に対し尊敬と共に、疑問が脳内を占めたのよ。外交にかこつけて、本を集めるのが目的な御仁だったのではないかと。だから、こっそり母屋の図書館に行って、家系図を見てみたの。 私が思った通り、その代の嫡男は大公家を継がず弟君が大公に就任していた。 嫡男様は、魔術研究者として南方辺境領のノワール大公家ゆかりの地に住まいを移されたみたいだ。行ってみたいわ…。このガルシア=ファン=ノワール殿の南方辺境領の屋敷。きっともっとマニアックな蔵書をお持ちだと思うの。まだお屋敷あるのかしら…。家系図には一応奥様のお名前もあるし、お子様も居るはずよね…。お子様の名前は家系図には載ってないけど。研究者ならきっとちゃんと残してあるはず、図書室の蔵書も綺麗に保護魔術が掛けられてるし。 ノワール大公家は、何代かおきに、ちょっと変わった人…いえ変人が、出てくるのよ。ガルシア殿はそうでもないけど、他の皆様色々と有名人になってるわ。 当代一の魔術技工士・薬師錬金術師・魔術研究者・冒険ギルドの帝に着いた人・中には有名なオペラ歌手。とかね、皆様、好きな事をとことん追求するから、大公家から飛び出しその道の権威になってたりするのよね。無論、今はその方々亡くなっていて、その方々の子孫が居るわけなんだけど。 我が母上が、あんな熱心に帝国に対し尽くしていたのは、やはりノワール大公家のお血筋だと思うんだ。とことん追求する探求者。五大大公家の中で、ノワール大公家はなんか毛色が違うのよね。 我がドリスタ帝国の五大大公家は元を辿れば、皇家の方が臣下に下がる時に建てられお家なの。 外務を司る「ノワール大公家」 初代皇帝陛下の正妃が建てられた大公家。 まだ戦火が激しい時代、辺境領のご令嬢であった初代皇帝陛下の正妃メアリー=スチュアート=ファルファーラ様は、外交の要だったそうなの。御婚姻され皇家に入られた後も外交を熟され、旦那様が身罷れた後、新たな大公家を建てメアリー=ファン=ノワール大公として外交をこなされたそうよ。メアリー様の亡き後は、当時の皇族の方が臣籍降下されて継がれてるわ。 国務を司る「オーガナイザー大公家」 初代皇帝陛下ワイライド様の最も大切にされた末妹姫。リシア=ルーナ=オーガナイザー様。が臣下降嫁にあたり建てられた大公家よ。初代は女大公だったのよ。初代皇帝陛下は、リシア様をただ臣下に嫁にやるってのが嫌だったと言われてるわ。なんたって「光の魔導姫」だったらしいしね。 財務を司る「フィレージネット大公家」 初代皇帝陛下の次男クロード様が建てられた大公家。身体が弱かった彼は、学問に力を入れ特に財務を整える為に励まれたそう。ドリスタ帝国の税制法理経典の原書は、クロード様が纏められたのよ。 法務を司る「ウォートン大公家」 初代皇帝陛下の弟君が建てられた大公家。 ドリスタ帝国が巨大化してく中で、法整備が必要と注視された弟君が建てられお家よ。 総務を司る「ボストン大公家」 15代皇帝陛下が退位されて建てられた大公家。 その頃、戦火は落ち着き内政に力を入れ始めたの、その為に行政の管理をする部署が必要と感じられた15代皇帝陛下自ら作られた大公家。 軍務を司る「ダクトリア大公家」 我が叔父上が養子に入った大公家ね。此処は随時更新される変わった大公家。 皇帝弟殿下が臣籍降下する際に、ダクトリア大公家と養子縁組みして大公を相続するの。 だから皇族の為の大公家なのよ。ある意味、準皇族みたいな扱いなの。 大公家と名乗っているけど、五大大公家の中には入ってる様な、入ってない様な不思議な大公家よ。 だから実質ドリスタ帝国には六つの大公家があるわ。 ついでに言うなら、皇帝妃は順番に輩出されてるの。だから広くみれば、大公家はみんな親戚なのよ。 今代はノワール大公家からだったんだけど、母上があんな事に成り、今代はオーガナイザー大公家になってしまった。 本来なら次世代の皇帝妃はオーガナイザーからのはずなんだけど、色々ありすぎたから、皇家もノワール大公家に対して謝罪の意味も込めて次世代の皇帝妃はノワール大公家からに成ると言われてるわ。 でもね…私は思うの。下手に決めるからぐちゃぐちゃに成るんだし、決めるのやめて実力主義にすれば良いのにって。大公家のご令嬢は皆様平等に皇帝妃教育受ければ良いのよ。で、落第点を出したご令嬢は、皇太子の側妃候補として側妃教育をがっちりさせれば良い。 それでも、母上達みたいな問題が出たら、潔く認めてやれば良い。但し、皇太子の地位は剥奪すれば良いわ。だって、皇帝になる意味を理解してないって事なんだから、解ってない者が皇帝になるなんて最悪だわ。実際今最悪なんだもの。なんで上皇陛下も上皇后陛下も、あんなのを皇帝にしたのかしら?理解出来ないわ。 私の大好きな図書室を散策しながら、詮なき事をつらつらと思う。最奥の本棚を何気なく流し見て、一つの本に視界が吸い込まれたの。 「魔術師マーリンの分かり易い相対魔術理論」 随分と軽い調子の題名の割には図太い蔵書は、古代ドリスタ古語で記してある。手に取ろうと思っても太過ぎて本棚から出せないわ。
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