ノワール大公家の図書館

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どうやってこの分厚い蔵書を取り出そうかしら?悩みながら小さな手を見つめ手を握ったり開いたりを繰り返す。 本当に小さいわ…わたしの手。今更だけど、本当に人生やり直してるんだわ。 視線を上げ本棚を見上げる。そこまで背が高くないはずの本棚は、今の私には巨大な壁の様に見える。 分厚い蔵書は、太さ30センチくらいなのよ。18歳の私なら、大した苦もなく取り出して読み込める。そりゃ重さは感じるだろうけど。肉体強化させれば余裕だわ。 ………………。そっか。肉体強化があるじゃない!! 早速肉体強化を纏って、恐る恐る古書に手を伸ばす、ゆっくりゆっくり引き抜く為に、両手で古書に手を掛けるの。 …!!!!!! 引き抜けない!!!どうしましょう…。困ったわ。古書の周りの蔵書を確認する。私が読みたい蔵書より厚さはないのよね。私の小さな手でも片手で取れそうなの。 しょうがない…周りの本を退けてみよう。 しばらく格闘し周りの本を退けた。近くに備えつけてある椅子に数冊の本を丁寧に置く。蔵書の周りはぽっかり穴が出来たのよ。その様子を見て私は遣り切った満足感を感じたの。 いや、まだ目的の物は手に入れてないんだけど。 額に薄っすら汗をかいてる私は、ハンカチを取り出して汗を拭って、本を置いた場所の隣に腰掛けた。 ふわふわと漂う小さな木の精霊と風の精霊が私によって来て、清涼なそよ風を起こし、熱を冷やしてくれる。 遮光カーテンに遮られてる昼間でも薄暗く淀んだ古紙の匂いがする図書室。 等間隔に置かれてる魔法ランタン灯は背が高く、今居る区間のみを照らしてるオレンジの温かな光に私は目を細めた。 ガルシア=ファン=ノワール殿は、本をこよなく愛し、未知の知識を探究する事が生き甲斐だったのだろう。 魔法ランタン灯の光すら、蔵書を傷めない為の保護魔術を仄かに発しているんだもの。 「マリアンヌ。ガルシアはね秘密の小部屋を作ってるんだよ。そこにはね、古〜い。原書がいっぱいあるの。ねっ探しなよ!」 休んでる私に、悪戯に楽しく話しかけて来たのは風の精霊。彼は、生まれて150年経ってるらしい。だから歴代ノワール大公家の者を、ずっと見ていたらしい。 精霊は生まれて1000年は、まだ子供らしいの。 では上位精霊は一体何歳なのかしら?って疑問に思ったけど、聞くのはやめたの。私達が、祈りを捧げる精霊は、恐らく上位精霊の方。ならばそんな些細な事は知る必要感じなかった。 「うん。そのうちね。今はあの不思議な題名の蔵書を読みたいのよ。」 ぽっかり開いた空間に手を示せば、風の精霊はふよふよと蔵書によると、魔術を発動させ、蔵書を取り出し私の元に運んでくれたの。 「あら?どうもありがとう。すっごく嬉しいわ。だから、あっちの机に持ってってくれない?」 私のお願いに、彼は心良く了承し運んでくれる。それを横目に、取り出した本を元に戻した。 それにしても、今日はついてるわ。レイラはお休みを取って皇都に来てる姉上に会いに行ってるし、習い事は全て休みの日。私が何処で何してようと誰も気にしないわ。私についてる監視魔法は、闇の精霊が嬉々として幻術魔術を挟んでくれたから、監視魔法をあちらが覗くと、私は自室で自習してる姿が映ってるはず。 うんしょ。と椅子によじ登り、机の上に置いてある蔵書の表紙をそっと覗き込む。 私の周りには、風・木・光・土の精霊達が寄って来てふよふよ漂ってる。 古代ドリスタ古語で書かれてる表紙。 精霊達に教えてもらった、鑑定魔術を目に貼り付け、更に、翻訳機能魔術を展開する。 この翻訳魔術はね、光・闇の精霊が教えてくれたの。完全鑑定魔術って、素材の大元まで鑑定してくれる優れものなのね、その応用らしいの。 今ある文字は、古代より脈絡と続いて来た文字で人族が自分達の解り易い様に改変した物。だから古語とは、今ある文字の大元だから、翻訳機能魔術が有って当然でしょ?って言われた時は、目が点になったわ。 古語研究者達を全否定したようなもんよ。非常に気不味い気持ちになったの。この魔術はこっそり使うって心に刻んだわ。 「魔術師マーリンね。非常に著名な方。ドリスタ帝国の魔術の基盤を整えた方。一体どんな方なのかしら?」 抑えきれない好奇心で胸の鼓動が高鳴る。ゆっくり慎重に表紙を開いたのよ。
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