森の住人と日常

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創造魔法を駆使し闇炎を浄化し、夢魔の領域に行って、ユーリさん達に会い、聖剣の神殿に行って、魂の浄化し、そして……今……龍化したザックの上に乗り空を降下してる。 なんか…色々あったな…。そういえば……時間はどれくらい過ぎたのかしら…って気が遠のく。 眼下には見渡す限り広大な森林が広がっている。空中に浮かぶ大小様々な浮島には、小さな集落や動物が生活をしてるのが見える。所々に地上から逆さまに流れる川が浮島に繋がっていた。 空を散歩する鳥類の種類は豊富なの。小さなものから巨大なもの。その身に電気や炎を纏うもの。様々な鳥類を横目に、私達は地上を目指して降下しているの。 強制転移で投げ出された場所は天空で、私が驚いてる間に、ザックは龍化し私を背中に乗せた。無論防御結界を私にしっかりと付けて。 「一体…此処はどこなのかしら…。」 『アシュヴィンの双神の御在所ですね。』 「住む人が居るわ。」 『えぇ。アシュヴィンの双神の眷属達です。』 「眷属達?」 『はい。あー。そろそろ着きます。試練の谷ですよ。』 ザックのセリフに、大きな背中から地上を見下ろす。森の中に、まるで龍が爪で引っ掻いたみたいな巨大な谷が出来てるのが分かった。下は真っ黒で谷底が見えない。ザックはその中に降りていったの。 真っ黒な谷の中で、ザックの銀色の鱗が仄かに光を放ち、螢火の様に周りを写し出す。ゴツゴツとした岩壁にはキノコが生えていて、私は少し頬を緩めたの。 『着きました。試練の谷。人化しますね。』 谷底に降りたザックは、言いながら私を抱き上げた状態で人化したの。……抱き上げるの好きよね……ザック。 ザックが人化した途端に、足元に大きな魔法陣が現れた。眩い光を放って現れた魔法陣。 その光が治る頃…。私達の前に、金色の肌をした美青年が二人。向かい側に立ってたの。 「あー。試練って何年振りだ?」 「さぁな。久々過ぎて解らん。」 「なんにしろ…試練だな。」 「だな。」 「さて…ヤろうか。」 やる気なさげな気だるい雰囲気から一転。二人の前に巨大な片刃剣がクロスして現れたの。 クロスする片刃剣からブワリと神気の爆風が私達を襲う。 咄嗟に肉体強化と防御結界を自分に掛けた。ザックは私をかばう様に手前に踊り出し、片手を龍化させ低く体制を保ち爆風をやり過ごそうとする。 「うぅん??なんだお前…隔世遺伝種だな。」 「ココじゃあ狭いな。」 「だな。では…変えよう。」 彼らは軽いやり取りをしながらクロスした片刃剣を一つ手に取った。 ーシャランー 鈴の音の様な刃の音がしたと同時に私達は、広い平野の上に立ってたのよ。 「さて…簡単に死んでくれるなよ。」 嗜虐的な笑みを浮かべた二人は、目にも止まらぬ速度で斬りかかってくる。 私は瞬時に横に飛びんだ。ザックは、迎え撃つ様に漆黒の剣を亜空間から引き抜くと、弾丸のように向かってくる相手に間合いを詰め、一度飛躍すると思いっきり剣を振り下ろす。受け止められてしまったザックは、ハッっと鼻で笑うと更に早い剣技を仕掛けた。 私は、手に、前世の時、愛用していた魔銃を構え此方にくる相手に向け魔弾丸の連弾を放ち、同時に、魔術を展開し天を裂く稲妻を思いっきり撃ち込んだ。 稲妻が轟いた地面には大きなクレートが出来上がり、砂煙が視界を奪う。 チッ。小さく舌打ちをして浮遊で身体を浮かべ空を駆け上がる。足元に風の渦を貼り付けた瞬間、真横から剣風が襲った。素早くしゃがみ込み、横から斬りつけられる間合いに入り込み、魔銃の銃口を相手の腹に捻り込む様に当て、引き金を引いた。 「チッ。全く手答えがないわ。」 私の攻撃は空を切る。どうやら瞬間移動を駆使してるらしく、気配が全く感じられない。 爆音を響かせてるザックの方は、ドンドン遠ざかっていた。 …なるほど…引き離す訳か。グルリと周りを見渡して私は、サークル状に感知魔術を展開させたの。 「わたくし…負けるの嫌いなんですのよ。」 感知に引っかかる場所に、瞬時に移動し回し蹴りを繰り出した。その足が空回りする。 「……瞬間移動……厄介ね。」 眉間に深く皺が寄る…なればそう……。 「暗き闇よ、深闇の咎人よ、光を喰らい、歪に堕ちよ。ダークヘルズ。」 詠唱までしながら紡ぐのは、感知魔術を展開した場に巨大な重力を落とすもの。天空に魔法陣が浮かび、回転しながらその場を圧縮していく。 ーズズズー と地を滑るような音を出しながら、魔術は圧縮し飛散した。 「君やるね。」 真横から聞こえた声。咄嗟に魔銃を撃ち、後方に飛び引く。 ニヤリと口角を上げた金色の男は、ドン。と音をたて、此方に加速させ突っ込んで来ると私の背後に回り剣を振り上げる。 私は身体を回転させて魔銃を撃ち抜いた。
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