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「これが覚醒種?」
「あぁ…君の番。龍族で神龍を除き最強であり伝説の龍。」
目の前の戦闘は魔力を纏った瞳でも見切れない。金色の男の聖なる気のオーラと同等のオーラを纏い闘ってるザックは、私が見た事もない好戦的な表情をしていた。
二人が持つ剣は合わさる度に爆風を呼び、地面はその爆風に抉られている。
「あ…でも…そろそろ剣が持たんな。」
私の聖剣を作り上げたもう一人の男は、クルクルと銃を指で回しながら、闘いをのんびりと見てる。
「あ。終わった。」
剣で打ち合ってた二人は、宙でピタリと止まった。そしてなんでか肩を抱き合って讃えあってるの。男の友情??
「はい。これ聖剣。また遊びにおいで。この中に此方の鍵入れてあるから。」
首を傾げる私に対し隣の男はポイって聖剣を投げ渡したの。…聖剣ってこんな軽く扱って良いわけ??つい冷めた目で睨んであげたわ。
「睨まないでよ。」
「わたくしの物を投げたのですよ?」
「えー。ごめんごめん。」
「投げやりだわ。」
「許してよ。」
「あら??」
私の手にあった聖剣は、金色のブレスレットに変わったの。
「へぇ。やっぱ君面白い。普通なら体内に入るし、呼び出しは魔法陣なんだけど。」
「これ身につけた場合、現実世界ではどうなりますの?」
「うん?起きたら手首に現れるよ。」
「……この細かな文字はなんですか?」
「あぁ…。聖剣の名だな。君さ、本来ならまだちびっ子だろ?だからまだ読めないよ。聖剣には三段階の覚醒がある。今は一段目。二段目になった時、聖剣の真名を知るよ。」
「ならば楽しみにしてますわ。…そういえば聖剣って人化致しますの?」
「あー。んー。厳密にはしないね。」
「なればユーリさんの聖剣は?」
「んー。ユーリ?あれは規格外。論外。別物。ジンとユーリは…特殊な立場だからね。」
「そうなのですか?」
二人で話してる間に、ザックはもう一人の男に聖剣を作ってもらっていた。
ホクホクと嬉しそうな顔をしていた癖に、私と金色の男が話してるのを視界に入れた途端に無表情になったのよ。
……病んでるな……ザック。どうしてそうなってしまったのかしら?
無表情のまま此方に向かうザックに、苦笑いを浮かべ、私は彼に向かって走りより抱きついたの。
……コレ良く彼女が我が婚約者様にやってたのよね……。
「あれ??可愛いけどなんで??」
ぎゅーと抱き返すザック。何故か狼狽えるから私はコロコロと笑ったのよ。
あぁ…なんだか…幸せだわ。
ーーーーーーーーーーーーー
「この魔法陣はプージャルのだわ。」
スタンの報告書を読み込んでたリリーが一つの魔法陣を指差した。指差された魔法陣を覗き込み、スタンは一つ頷くと苦笑いを浮かべた。
「ですよね。プージャルってユーラシア大陸の南方の小国ですよね?」
「えぇ。そうよ。あの国は神聖国。」
「……魔術より精霊術に特化してるお国。」
「そうね。この魔法陣はプージャルの精霊召喚魔法陣を元にしてるだけよ。ココ見て変換の繋ぎは……タンライトの物だわ。」
言われた箇所を注意深く見つめ、スタンはもう一枚の紙をリリーに渡した。
「コレはサーカス団のテントの中で見つけたトラップ魔術の痕跡です。肝心な部位は昇華されてますが、外苑はなんとか見つけました。」
「このトラップ良く捉えれたわね。」
「あぁ。ちょっとアレを。」
スタンがバツ悪そうに告げれば、リリーも苦笑いを浮かべた。
「もしかして…姫様…アレ取りに行かれてるのかしら…。」
ふと思った事をポツリと呟いたリリーは、チラリと銀色の繭を見た。ヴィオレットは愚図ったが、寝る時間だと諭し、フルルと共に私室に戻っている。ナスカとアビは、真剣に繭を見つめてそこに立っていた。
「有り得ますね。ザックが居ますから。」
「姫様……ドンドン私達みたいになってない?」
「今更ですか?」
「まぁ…古語が読める時点で似たようなもんね。」
「ですね。それより…このトラップ魔法陣どう思います?」
「……そうね……。これはホルスの諜報班が使う物に似てるわね……。なんだかバラバラだわ。サーカス団が何処を回ったのか調べるべきね。寄った街で懇意だった業者もね。」
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