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夢の中での出会い
あぁ…コレは夢だとマリアンヌは確信した。
爽やかな深い森林の中にある大きな湖の畔。
短い草花を、サクリ・サクリと音をたてながら踏みしめゆっくりと畔を散策してるのは18歳の私。
身につけているのは、皇族の正装。私の記憶が正しければ、私が断罪された時に身につけていた忌々しいドレスである。
ドレス姿でしかもヒールを履いてるはずなのに、滑らかに動ける事に疑問が浮かぶが、視界の先に見える見覚えのある背中に向かって、ただ真っ直ぐに進む。何故か解らないが、酷く懐かしく感じる背中。
「あら?来ちゃったの?」
後2.3歩で、彼女に並ぶところで、こちらを見ないで掛けられた声に、ピタリと足を止めた。
「まだ早いわ。貴女と私。まだ会えない。」
クスクス笑って彼女は、ゆっくりと前方に足を進めてく、私は追いかけたいのに、なぜか体は全く動かない。
「ねぇ。知ってる?世界はね、一つじゃ無いの。」
一瞬首だけで振り返り、言葉を発した彼女の顔を見て、私は目を見開いた。
「まだダメ。始まったばかりの今世。貴女は貴女のすべき事を、私は私のすべき事を。今度こそ…ね?」
目を細めてこちらを見た彼女は、それだけ言って立ち去ってしまった。
誰も居ない静かな森林の湖。
マリアンヌは、ぼんやりと立ち尽くした後、ドレスが汚れるのは気にしないで、そっとその場に腰を下ろし湖を見つめた。
太陽?の光を浴びキラキラ光る水面と、爽やかな森林の香りを含む風に抱かれ目を細める。
脳裏に浮かぶのは、先程合間見れた女性の姿。良く良く考えれば、彼女が身につけていたドレスも見覚えがある。
「私と同じ顔してた。」
ポツリと呟いた声を拾う者は居ない。
「ふ〜〜ん。もう来たのマリアンヌ?」
ふと掛けられた声に、そっと振り向く。振り返った先には、仄かに発光して姿がよく見えない人物が、こちらを見下ろしていた。
顔も良く見えない相手は、男なのか女なのか?
多分、そのどちらでもあり、上位精霊なのだけはわかった。
「私を知ってるんですか?」
ただ思った事を発した質問に相手は首を傾けた。
「おや?そうか、まだ君は、来てないのか。うん、良く知ってるよ。ほんとうに良く。」
「どうして?」
「それは、答えられない。制限がかかってるから。」
「さっき、もう来たの?って。」
「あぁ。そうだね。早いなって思ってね。彼女は、ずっと前から来てるけど、君は、ほら、10歳になんないと。まだ1歳でしょ?」
「でも、今の姿は18歳だわ。」
「あぁ…。多分引っ張られたんだ、彼女に。きっと。」
「どうして?」
「さぁ?どうしてだろう?」
「それも答えれない?」
「うん。ヒントなら。」
「ヒント…。」
「うん。ヒント。君であり君でない。彼女であり彼女じゃない。」
「…良く分からないわ。」
「例えば、魔力の塊が砕け散って飛散したモノ。それを全部掻き集めたら、君はなんになると思う?」
「さぁ?なんだろう?そもそも砕け散ったモノって集められるの?」
「さぁ?どう思う?」
「意地悪な質問だわ。」
憤慨した私に、かの者はクスクスと笑い、私の頭をそっと撫でた。
「大丈夫。もうすぐ会えるから。」
優しい声色と共に視界が歪む、心地よい風が頬を撫でた気配を感じ
「またね。マリー。」
さっきの女性の声が脳裏に響いたと同時に視界が暗転した。
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