夢の中での出会い

1/1
988人が本棚に入れています
本棚に追加
/642ページ

夢の中での出会い

あぁ…コレは夢だとマリアンヌは確信した。 爽やかな深い森林の中にある大きな湖の畔。 短い草花を、サクリ・サクリと音をたてながら踏みしめゆっくりと畔を散策してるのは18歳の私。 身につけているのは、皇族の正装。私の記憶が正しければ、私が断罪された時に身につけていた忌々しいドレスである。 ドレス姿でしかもヒールを履いてるはずなのに、滑らかに動ける事に疑問が浮かぶが、視界の先に見える見覚えのある背中に向かって、ただ真っ直ぐに進む。何故か解らないが、酷く懐かしく感じる背中。 「あら?来ちゃったの?」 後2.3歩で、彼女に並ぶところで、こちらを見ないで掛けられた声に、ピタリと足を止めた。 「まだ早いわ。貴女と私。まだ会えない。」 クスクス笑って彼女は、ゆっくりと前方に足を進めてく、私は追いかけたいのに、なぜか体は全く動かない。 「ねぇ。知ってる?世界はね、一つじゃ無いの。」 一瞬首だけで振り返り、言葉を発した彼女の顔を見て、私は目を見開いた。 「まだダメ。始まったばかりの今世。貴女は貴女のすべき事を、私は私のすべき事を。今度こそ…ね?」 目を細めてこちらを見た彼女は、それだけ言って立ち去ってしまった。 誰も居ない静かな森林の湖。 マリアンヌは、ぼんやりと立ち尽くした後、ドレスが汚れるのは気にしないで、そっとその場に腰を下ろし湖を見つめた。 太陽?の光を浴びキラキラ光る水面と、爽やかな森林の香りを含む風に抱かれ目を細める。 脳裏に浮かぶのは、先程合間見れた女性の姿。良く良く考えれば、彼女が身につけていたドレスも見覚えがある。 「私と同じ顔してた。」 ポツリと呟いた声を拾う者は居ない。 「ふ〜〜ん。もう来たのマリアンヌ?」 ふと掛けられた声に、そっと振り向く。振り返った先には、仄かに発光して姿がよく見えない人物が、こちらを見下ろしていた。 顔も良く見えない相手は、男なのか女なのか? 多分、そのどちらでもあり、上位精霊なのだけはわかった。 「私を知ってるんですか?」 ただ思った事を発した質問に相手は首を傾けた。 「おや?そうか、まだ君は、来てないのか。うん、良く知ってるよ。ほんとうに良く。」 「どうして?」 「それは、答えられない。制限がかかってるから。」 「さっき、もう来たの?って。」 「あぁ。そうだね。早いなって思ってね。彼女は、ずっと前から来てるけど、君は、ほら、10歳になんないと。まだ1歳でしょ?」 「でも、今の姿は18歳だわ。」 「あぁ…。多分引っ張られたんだ、彼女に。きっと。」 「どうして?」 「さぁ?どうしてだろう?」 「それも答えれない?」 「うん。ヒントなら。」 「ヒント…。」 「うん。ヒント。君であり君でない。彼女であり彼女じゃない。」 「…良く分からないわ。」 「例えば、魔力の塊が砕け散って飛散したモノ。それを全部掻き集めたら、君はなんになると思う?」 「さぁ?なんだろう?そもそも砕け散ったモノって集められるの?」 「さぁ?どう思う?」 「意地悪な質問だわ。」 憤慨した私に、かの者はクスクスと笑い、私の頭をそっと撫でた。 「大丈夫。もうすぐ会えるから。」 優しい声色と共に視界が歪む、心地よい風が頬を撫でた気配を感じ 「またね。マリー。」 さっきの女性の声が脳裏に響いたと同時に視界が暗転した。
/642ページ

最初のコメントを投稿しよう!