そこにずっといる

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 次に目が覚めた時には、身体全体がヒンヤリしてた。お母さんが帰って来て身体に氷を当ててくれてるのかなって思ったら違った。  おかっぱだった。おかっぱ着物が私の布団の中に潜り込んで、私の身体をホールドしていた。 「ぎゃ────!!!!!!」 「しーっ」  おかっぱ着物の女の子は、とても冷静に人差し指を自分の口に当てて、静かにしろのポーズ。 「なによダレよあんた」 「怪しいモノじゃない」  一応言われた通りこしょこしょ声で尋ねると、説得力のないことを言った。  むしろ怪しくないところを教えて欲しいんだけど。 「むしろ先住民として、アタシにこの家を自由にする権利があると思う。ついでに言うとアンタよりアタシのがずっとお姉さん。お姉さんの言うことはちゃんと聞く。OK?」  最後だけやたら現代風に言う怪しいのに謎の説得力を感じて、私は素直に頷いてしまった。  多分具合悪くなかったらもっとツッコミ入れたとは思うんだけど。  心細くて泣いて寝入った私が起きたら、ギュッと抱きしめてくれていた存在を私は邪険にすることが出来なかった。  怪しいのの身体は全身氷みたいに冷たくて、元気な時だったらそれだけで怖かったと思うんだけど、熱が上がって気持ち悪くなっていた私にはむしろ救世主。  年上ぶる兄貴風(この場合姉貴風だろうか?)すら涼しく気持ちよく感じる。   「……本当は出てくる気はなかった。見守るだけで」 「人が苦しんでるのに見てるだけなんて悪趣味」  心細かったのもあって、安心感から私はついそんな意地悪を言ってしまう。  でも怪しいのは私の生意気な態度すら優しく包むような微笑みで、冷たい手のひらで、私の頭と心を撫でた。 「まあ悪趣味は認める。でも私の趣味じゃない。だがアタシとアンタは同じ世界にいてもアンタとアンタのトモダチや親みたいに関わりは持つもんじゃない」 「なにそれ」 「アタシにもわからん。わからんが感覚として知ってる。そういうもんだ、受け入れろ」  と言われても具合が悪いせいで怪しいのの命令を受け入れるのも、言葉の意味を考えるのも上手くいかない。 「でも今のアンタはひとりぼっちで泣いてた。アタシは子どもは嫌いじゃないが、子どもの鳴き声は苦手だ。だから来た。もう寝ろ」 「さっきまで寝てたから眠くない」 「まだまだお前の体調は悪い。もう一度寝ろ」  怪しいのが額をつっつくと、眠気が収まっていたはずの頭がまたトロンとして、すぐにまぶたが降りる。 「おやすみ」   おやすみ。って言おうと思ったけど言えずに意識が飛んだ。 「──アンタは一人じゃない。一人じゃないから、こんなのはこれっきりだ」
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