そこにずっといる

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 子どもの頃、暑くて扇風機強にして当たりながら寝てたら、思いっきり夏風邪引いちゃったことがあるのよね。  まあ自業自得なんだけど、自分の身体の熱と高い気温の相乗効果で暑いの熱いのなんのって。  ついでにこじらせちゃったせいか、気温で暑いのか自分の体温が熱くてあついのかもう全然わかんなくて。  しかも親ものっぴきならない用事で、おうち留守にしてて一人ぼっちになっちゃって。  なんの用事かまでは思い出せない。子どもの頃の話だし忘れちゃった。  そんなにお母さんっ子お父さんっ子ってわけじゃないけど、具合が悪いの一人ぼっちだと心細い。  テレビつけてればとりあえずうるさいけど、見る気力もないし、ガンガンする頭に響いてイライラするし。  吐き気を抑えながらテレビを消したら、途端に静かになった。  平日の昼間の住宅街なんて、子どもは学校なりなんなり行ってるから、まあそうよね。  開いた窓からはジージー言うセミと、たまに忙しそうに走っていく車の音が聞こえる。   一応生き物や人の気配くらいはしたわけだけど、セミも車も私のところに用事があるわけじゃないし、なまじ気配がするせいで一人ぼっちが引き立った。  ときおりさやさや揺れるお庭の盛りの芙蓉の木の花や、おいしい実を熟すのにあと一季節な、緑の葉っぱがまぶしい柿の木の枝も私のなぐさめにはならない。  今度はミンミンうるさいセミの声に耳をすませていれば、何故かじわーっと体の熱に負けない涙が出て来ちゃって止まらなかった。  頭痛いし喉ガラガラだし咳も鼻水も出るし、身体は熱いしで私の身体も精神もボロボロ。  うわーんと外に聞こえそうなくらい大泣きして、そのうちに疲れ切って私はようやくつかの間の眠りに入ることが出来たわけ。
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