最後の願い事

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   ある日、全宇宙の神様が銀河の辺境までやってきた。  地球は星降る夜だった。  日本では短冊に願い事を書いて笹の葉に吊し、浴衣姿で星空に祈る人たちであふれていた。どうやら七夕まつりをしているらしい。   「さーて、地球でも願い事を叶えてやるかな」  全宇宙の神様は、腕まくりをして仕事に取り掛かった。   『好きな人が振り向いてくれますように』 「なるほど、よしよし。そーれ」と杖を振りキラキラした光る流線を宙空に引く。  すると、とある女性が振り向いて青年と目が合い、恋が始まった。 『頭が良くなりますように』 「なるほど、よしよし。そーれ」と杖を振りキラキラした光る流線を宙空に引く。  すると、とある受験生が突然、なんでも暗記して忘れなくなった。    そして、次の願い。 ――世界から争い事がなくなりますように。     「うーむ、こいつは大変なエネルギーが必要じゃな。しかしワシなら朝飯前。そーれそれ」と一層激しく杖を振り振りキラキラした光る流線をたくさん引く。  すると地球の裏側、銃撃の鳴り止まぬ内戦をしていた街は突然静寂を迎え、瓦礫と薬莢が散らばった通りは閑散としてそよ風が吹き、ドラム缶の影でうずくまっていた一匹のネコが首を伸ばして平和そうにニャーと泣いた。    そうして全世界から人の姿が消えた。  人類は滅亡した。  日本の七夕まつりの会場も、笹の葉の飾りとライトアップだけが残されてみんないなくなった。   「よしよし。あら? もう願い事は終わったか。さて今回も、良い仕事をしたのう。かっかっか」  そう言うと神様は高笑いを響かせて星の彼方に去っていく。    その姿を見送りながら地球がつぶやいた。 「やっと願いが叶った。ことあるごとに争いごとばかりする寄生虫たちには、ホントうんざりだったんだ」    とある星降る夜の出来事だった。
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