青い、

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「うお」  何とか清美をまいてホッとし、教室の中に入ろうと扉に手をかけた瞬間。ゾクっと襲い来る寒気に拓は肩を震わせ声も思わず漏れた。  こういう嫌な予感がする時は、大抵恋愛ごとに関するトラブルが起こりがちなので拓は顔をしかめた。かといって、教室の前で悶々と悩んでも仕方がないので「まぁなるようになれ、だな」と呟き扉を開けた。 「お、よー拓。今日は早いなー」 「拓おはよー」 「おはよー」  拓の登場に、すでに教室にいたクラスのメンバーが声をかけてきた。 「おう、おはよ、はよー。よ!」  笑顔で挨拶を返し、仲の良い友とハイタッチをする。  容姿と、この明るい性格のおかげで声をかけないクラスメイトはほぼいない。声をかける勇気のない者でも、必ず拓には視線を向ける。  ただ、1人を除いて  まだ授業の始まっていない時間だからか、耳にイヤホンをつけて勉強に勤しんでいる奈海が隅の席にいた。よっぽど好きな曲が流れているのか、頭をリズムよく揺らしながらペンを走らせていた。  真剣そうな、だけどどこか楽しそうな表情。  先ほどの不機嫌で心底嫌そうな表情からは到底想像できない表情に、拓はついじっと見惚れてしまった。こちらまで微笑んでしまいそうなほどの口角の綺麗な上がり方は”今を楽しんでいる”という様子がよくわかり、見ていて飽きないものがあった。 ――そういえば  どうしてあの時、階段の上で一人で泣いてたんだ?  知りたい。  なんせ、あの姿を目にして改めて惹かれたのだから。  拓は奈海の目の前の席にカバンを置く。  大きめの音を立ててみたが、奈美はちらっと一瞬こちらに視線をやるだけでそれ以上は気に留めもしない。それどころか、片手をイヤホンに添え、耳に押し付ける様に当てて周りの音を遮断する素振りをしてみせた。  まぁそんな反応だろう、と予想はしていた。
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