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無理やり帰らされた葉山を一応、廊下まで二人で見送る。
でも、この人、なんだかんだで、葉山が気に入ってるんだな、と思い、洸は笑った。
ふと気づくと、やさしげに自分を見て笑う遥久の顔が間近にあって、どきりとしてしながら、洸は俯く。
「な、なに笑ってるんですか……」
と言うと、
「いや、ちょっと思い出してたんだ」
と遥久は言う。
「初めての夜のあと、キスのひとつもなく出て行ったときのこと――。
俺はお前を好きになってから、ずっと錯乱している気がするんだが」
……自覚はあったようだな、と思いながら、洸が苦笑いしていると、
「最初はそんな自分に戸惑いもあったが、今はない」
とそう遥久は言い切った。
「恋をするということが、頭がおかしくなるということなら、俺は、一生、おかしいままでいたい」
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