お前、結婚するんだぞ

21/59
前へ
/59ページ
次へ
   だが、いざ、拾おうとすると、なかなか仔猫は現れなかった。  何故だっ。  探していないときは、あんなに遭遇するのにっ! と遥久は苦悩する。  ようやく、見つけたこの状況を打開する方法が消えそうになり、焦った遥久は、結局、ペットショップに行った。  愛らしく、立派な毛並みの猫を見ながら、それを洸に手渡す自分を妄想する。 「拾ったんだ」  いや、無理がある……。  腕を組み、真剣な表情で猫たちを眺めていると、他の猫は何故か警戒して近づいてこなかったが、ガラス張りの小部屋で遊んでいる仔猫だけがこちらを見ていた。  ふわふわの白と淡いベージュの毛の猫だ。  まだ赤ちゃんのようで、小さな毛玉に見える。  やけに足が短く、よちよち歩くその仔猫は、くるりとした黒い瞳でこちらを見上げ、なー……と鳴いた。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1775人が本棚に入れています
本棚に追加