1775人が本棚に入れています
本棚に追加
何故だろう。
洸を思わせる――。
その洸に似た仔猫が、
「拾って」
とこちらに向かい、おねだりしているような気がした。
いや、お前を拾うには、二十五万払わないといけないんだが……。
まあ、洸のために二十五万払うことなど、たやすいことだが、この猫だと買ってきたと簡単にバレてしまうだろうな、と遥久は悩む。
かしかしと爪を立て、キャットタワーに登ろうとしては失敗しているそのマヌケな仔猫は、運動する時間が終わったのか、狭いケージに戻されていった。
だが、ガラスの向こう、ケージの中から、仔猫はまだ自分を見つめ、
「拾って」
と言ってくる。
なんだか洸に言われている気持ちになった。
妄想してみる。
洸とこの仔猫と暮らす日々。
しかし、その美しい空間で過ごすには、自分は穢れ過ぎているような気がしていた。
最初のコメントを投稿しよう!