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お前と、と言う遥久に、
いや、その言い方だと、私もおかしいみたいなんですけど……と思ったが。
でもまあ、そうなのかな、とも思っていた。
課長が他の人とキスしているのを見ただけで、記憶喪失になってしまう私もまた、どうしょうもないほど、課長が好きなのに違いない。
「さっき、初めての夜のあと、キスのひとつもなく出て行ったときのことを思い出していたと言ったろう」
と言いながら、遥久は洸の部屋のドアを開けた。
片手で洸の肩を抱いて、そこへ洸を入れる。
「いや、あそこでまた、キスしてしまうと、仕事に行きたくなくなるから、しなかったんだが。
明日は休みだから、今日は心置きなくしよう」
と遥久は笑う。
いやいやいや、と赤くなりながら後ずさりかけたが、肩を抱いている遥久の腕が洸を逃がさない。
相変わらず、強引だ……と思いながらも、逃げる気持ちはもうなかった。
「愛してるよ、洸」
そう囁いた遥久がやさしく口づけてきた。
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