1、ラーメン大好き、辺津鏡

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『バカをいっとるんじゃなかよ!  やっと、ここまで心の修行ができたんじゃ。しっかり確かめるんじゃぞ。  何を感ずる?』  丸い物だね。円盤みたいな・・・。  あっ!なんか円盤みたいなのが現れた。タブレットだ!円盤形のタブレットだ・・・。  ユウコ姉ちゃんの心にはタブレットがあるんだね・・・。 『アホか!オマエ!  良く見ろさ。みんな、応現神(あらひとがみ)の修行してるんだベ!  心象べさ!』  今度は婆ちゃんが心に現れたと思ったら、母ちゃんがチャーシューの乗った大皿を持ってきた。婆ちゃんもうちの猿田比古神社の祭神、鈿女神(うずめのかみ)さんで、オレの守護神だ。 「ヨッちゃんちの、お、み、や、げ。  お昼は、私たちが、みんなのだいすきな、美味しいラーメンを作ってあげるねっ!」  そういいながらチャーシューの大皿を座卓に置いて、キッチンにもどり、今度は紅茶とお茶を持ってきた。 「じゃあね」  母ちゃんはダイニングキッチンの雑談の輪へもどっていった。  オレは婆ちゃんにいわれたように、ユウコ姉ちゃんの心をよく見た。  あれ、ホントだ。映像が現れてるだけだ。  婆ちゃんがいう。 『サスケがいうんは、古事記や日本書紀で、三種神器(さんしゅのじんぎ)で鏡と表現された心象だベ。それは、私らの時代より後世の者が伝えた話だべさ。  私らの時代は原大和朝廷の時代ださ。  祝詞に詠われてる、高皇産霊大御神(たかみむすびのおおかみ)饒速日命(にぎはやひのみこと)授けた十種端宝(とくさみずのたから)ださ。  十種神宝(とくさのかんだから)ともいわれてるべさ。  その中で、鏡と表現された心象ださ。  心象には二種類あって、そのひとつが辺津鏡(へつかがみ)と呼ばれる、ユウコ姉ちゃんの心象ださ。自分の心に人の心を映すんさ。ひいては人の近未来を映すんださ』  もう一つの心象は何?神器って神々の能力なの?心なの?  今度は爺ちゃんがいう。婆ちゃんは母ちゃんの心にもどったのだ。 『サスケがいう能力は、まさに神の心じゃよ。近可視能力じゃよ。  修行が進めば、おのずと心に現れるよってに、あわてんでもよかよ。  すでに二つ、現れおったでな・・・』  神の二つの心は、オレの心の魔除けの剣と、ユウコ姉ちゃんの近可視能力か・・・。  あいかわらず、爺ちゃんはかんたんに物事を教えない。実体験しろということか・・・。 『わかっとったら、チューシュー食って、ユウコ姉ちゃんの鏡を見ようぞね・・・。  ああ、そうじゃ。魔除けの剣は、本来は八握(やつか)の剣じゃが、お前には十握(とつか)の剣を与えたでな。このこと、よう、心得ておくのじゃぞ』  とか何とかいっちゃって、爺ちゃんはチャーショーをつまんでる。  おっと、爺ちゃんじゃない。つまでるんは父ちゃんだぞ。淡雪時雨もつまんでる。  幸たちなんか、紅茶とカステラとチャーシューだぞ。  こいつらの腹ん中はだいじょうぶか?メタボへまっしぐらだぞ。  だけど、いつお菓子を用意したんだ?  ははあ・・・、婆ちゃんと母ちゃんだな。母親たちが来るんで用意してたんだな。 『心配せんでよかよ。  皆、心のエネルギーに変るよってね、太りはせんばい』  そういって爺ちゃんは父ちゃんの中へ消えた。
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