2、ブタが消えた

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 小林はソファーのテーブルにある電話をスピーカーモードにした。R警察署に連絡し、ブタがいなくなったことを伝えた。  相むかいのソファーで小林の額を見て、佳子の父は、小林の若はげがめだちはじめたと思った。  小林はこの春に結婚したばかりで、中背の体型に小太りが加わってきた。体型の変化が結婚したあとでよかったなと、佳子の父は妙な気持がわいた。 小林の連絡に、R警察署はR市とD市で、同じような報告が多数あがっているという。 「・・・そんなわけで、R警察署とD警察署が合同調査することになりまして、本部はR警察署になりました。  今後の失踪につきましては、R警察署の野本刑事に御連絡ください。  私、R警察署の刑事、新井一心といいます」  R警察署の新井刑事はそういって通話を切った。  スピーカーで通話を聞いていた佳子の父は小林にいった。 「小林さん、豚舎に何か変ったことはなかったか?」 「さっき警察に話したように、残ってたんは、皮だけだ・・・」  こまったというより、小林は気味が悪いという顔で佳子の父を見ている。  最初、ブタがいなくなったと話したとき、なんで小林は、皮だけ残して本体が消えたといわなかったのだろう。もしかしたら・・・。 「残っていたのはそれだけか?」  佳子の父は冷静に訊いた。 「いや・・・あの・・・」  小林はそういったまま口を閉ざした。 「内蔵もあったんだろう?」 「あっ、ああっ・・・」  小林か妙に甲高い声でわめいた。 「それを、アイツらが食っちまったんだな・・・」 「・・・」  口まででかかった言葉を呑んで、小林はうなずいた。
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