49人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
小林はソファーのテーブルにある電話をスピーカーモードにした。R警察署に連絡し、ブタがいなくなったことを伝えた。
相むかいのソファーで小林の額を見て、佳子の父は、小林の若はげがめだちはじめたと思った。
小林はこの春に結婚したばかりで、中背の体型に小太りが加わってきた。体型の変化が結婚したあとでよかったなと、佳子の父は妙な気持がわいた。
小林の連絡に、R警察署はR市とD市で、同じような報告が多数あがっているという。
「・・・そんなわけで、R警察署とD警察署が合同調査することになりまして、本部はR警察署になりました。
今後の失踪につきましては、R警察署の野本刑事に御連絡ください。
私、R警察署の刑事、新井一心といいます」
R警察署の新井刑事はそういって通話を切った。
スピーカーで通話を聞いていた佳子の父は小林にいった。
「小林さん、豚舎に何か変ったことはなかったか?」
「さっき警察に話したように、残ってたんは、皮だけだ・・・」
こまったというより、小林は気味が悪いという顔で佳子の父を見ている。
最初、ブタがいなくなったと話したとき、なんで小林は、皮だけ残して本体が消えたといわなかったのだろう。もしかしたら・・・。
「残っていたのはそれだけか?」
佳子の父は冷静に訊いた。
「いや・・・あの・・・」
小林はそういったまま口を閉ざした。
「内蔵もあったんだろう?」
「あっ、ああっ・・・」
小林か妙に甲高い声でわめいた。
「それを、アイツらが食っちまったんだな・・・」
「・・・」
口まででかかった言葉を呑んで、小林はうなずいた。
最初のコメントを投稿しよう!