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俺の嫁、ポケットサイズになる
二週間前、嫁が亡くなった。
逆タマだからと親族の勧めた見合いで数回会っただけで結婚した仲だ。
おかげで始めから仮面夫婦で、ここ数年では会話もなくなっていた。
どうせ別居秒読みだったのだ。
あまり悲しいとは思わなかった。
全てが形式通りに進んでいき、俺は台本でも読んでいるように大根役者を通した。
その甲斐あってやっと色々なごたごたも粗方済んで、生活は元通りになりつつある。
そんな状況にホッと胸を撫でおろしつつある自分は存外薄情な男だったのだと思い知る。
だからなのかもしれない。
特に何もしてやらなかった嫁に自己満足にも形式的だけでも謝りたかったのかもしれないし、ただ単に仕事で疲れていたからかもしれない。
多分後者ではあるのだが、とにかく俺はその一時の気の迷いからこのアプリをいれた。
「呪いアプリ」
通称“心霊アプリ”と呼ばれるこのアプリ。
仕事帰りですれ違ったJKたち曰く若者の間で有名な代物らしい。
死んだ人に会えるとか心霊写真が撮れるとか噂は色々らしいが真偽はわからない。
でもそれでもよかった。
どうせ自己満足なのだから。
とりあえず起動してみると、まあまあ豪華オープニング動画の後にプロフィール画面のようなものが表示された。
今の動画いる?いらないよな?まあいいか。
「亡くなった方を入力してください」と書いてある。
よくわからないが名前、生年月日と欄を埋めていく。
「死亡動機?」
もしかして志望動機とかけているんだろうか。
……ちょっと面白いじゃないか。
しかし困った。
入力しようと思っても、俺には嫁が何故死んだかなんてわからないのだ。
何故、首なんてつったのかなんてわからないのだ。
仕方ないので他の項目に移る。
趣味、好きな食べ物、好きな事、好きなもの。
「……わかんねぇよ。」
それ以上俺に書ける項目なんてなかった。
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