俺の嫁、未練探す

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街を散策し始めて30分。 俺は30分前の発言を酷く後悔した。 なんせ真夏なもんだから暑くて暑くて仕方がない。 胸ポケットのスマホも熱を持ってきているし未練はまだ見つからないしで俺の精神は早くも弱ってきていた。 だ、だめだ……。 ショッピングモールかなんか、涼しいところへ行こう。 了承をとろうとスマホを覗き込むと、そこには棒アイスをかじりながらうつらうつら船をこいでる嫁がいた。 鼻提灯まで出ている。 「おい……。」 これはイライラする。とてもする。 人が炎天下で頑張ってるのにコイツって奴は……。 無防備なその顔も可愛いじゃねえか。 こう改めて眺めてみると(当たり前だけど)たしかに生前の嫁に似ている。 こんな可愛い嫁がいて俺って結構幸せだったのかも。 生きているうちにそう思えたらよかったのにな。 そしたら今も嫁は……いや、今更考えても遅いか。 今はとにかく嫁を早く成仏させなきゃ。 「嫁さーん、どこか行きたいとことかないの?」 鼻提灯が割れて嫁が目を開けた。 「ふぇ?」 なんだよ可愛いな。 寝ぼけてるとこも超絶可愛い。 くわえてたアイスが膝に落ちて慌ててるとこも可愛い。 「はは、大丈夫か?」 口元を拭おうと手を出して、ああそっか触れないんだったと思い出した。 そんなことすらしてやれないのが歯がゆい。 死ぬ前も死んだ後も俺は嫁に何もしてやれない。 そんな現実が切なくて、悲しくて。 「泣いてるの?」
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