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「いや…ただの汗だよ。」
マジで。
切ないし悲しいけど、どちらかというと自分が情けないっていうほうが大きいしそれも泣くほどかと聞かれたらそこまででもない。
「紛らわしいわね。」
暑くて暑くて溶けそうだ。
滝のような汗が顔面を伝っていく。
ああもう限界だ。
了承なんか知ったことか。
だいたい移動するのは俺なんだ。
どこに行こうが俺の勝手じゃないか。
「ちょ、ちょっとどこ行くの?」
「涼しいところ!」
暑さから逃げてやってきたのは大型ショッピングモールだ。
ここなら涼しさももちろん色々な物が見られる。
灼熱の太陽に焼かれながら人の少ない外を歩くより涼しくて人のいるここを歩いたほうが絶対に効率がいいと今気づいた自分が憎い。
「あー!ずるい!」
「自分で出せばいいだろうが。」
「あ、そっか。」
フードコートでアイスを舐めながら一息つく。
嫁はといえばまたこりずに棒アイスをかじっている。
また膝に落とさないといいけど、と旦那というよりも娘を見守る父親のような気持ちになる。(子供いないけど。)
見た目だけなら10歳以上差があるのだから当然かもしれないが。
「で、なんかそれっぽいもの思いついたか?」
「ごめん。寝てたから何も見てなかった。」
文句言ってやろうか、と思ったがシュンとした顔を見てたら怒れなくなった。
くっ…可愛いじゃねえか。
「だからもう少しシャバを歩き回る必要があるわね!」
「だから服役中ですか?」
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