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願いも虚しくイケメン探しは一日中続行された。
見つかるはずがないと再三言っても嫁は聞く耳をもたなかった。
それどころかもっと色々な所に行けとか歩くのが遅いとか言い出す始末だ。
これには心優しい俺もキレかけたが、元はといえば身から出た錆なんだと自分に言い聞かせ続けた。
うん。俺えらい。
「あ。」
「どうしたの?」
すっかり気力も体力もなくなって死んだ魚の目の俺とは相反して嫁は何かを見つめてキラキラと目を輝かせていた。
なに、なんなの…。
視線を向けるとそこは花屋だった。
ああ、女は花好きだよなあ。
花が欲しいのか?
それなら例のごとくアプリ内で出せるだろうに。
やれやれ、仕方ないな。
俺は花屋に入り店員を探したが、なぜか見当たらない。
「すいませえん!花、買いたいんですけど!」
店の奥へ声をかけると、やっと店員らしき青年が顔を出した。
「あ、すいません!お店閉めたつもりだったんですけど、シャッター開いたままでしたね。」
いそいそと店頭に出てきた青年はよく見ると大層なイケメンで、花屋だからなのか趣味なのかはわからないがつけているタンポポ柄のエプロンが店の雰囲気と馴染んでなくて一周周って可愛らしくてとっつきやすそうだ。
「なかなかいい人材なんじゃないか?」
「ん?なんか言いましたか?」
「…ん?あ!すみません。何でもないです!」
やっべえ。普通に嫁に話しかけてた。
隣にいるくらいの認識になってたわ…。
今更だけど俺の順応力恐るべし。
「そうだ!花、花は買えますか?」
花屋なんだから買えるにきまってんだろうが!とそっと心の中で自分にツッコミを入れる。
テンパっていたんだ仕方ない。うん。
「大丈夫ですよ。どんな花をご所望ですか?」
「どんな花って…。」
思わず口ごもってしまった理由は二つある。
花のことなんて俺にはわからないっていうのと、あと…。
「ここ、赤い花しかなくないですか?」
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