俺の嫁、消える

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俺はすぐに行動に移した。 細かいことなど何も気にしていなかった。 思考力はもうなかったのだと思う。 ただただ、解放されたい。 ただそれだけの願望しか見えていなかった。 自分しか見えていなかった。 「今日はどこへ行くの?」 何も知らない嫁はうきうきと俺を見上げていた。 「あのな、嫁。俺、スマホ買い換えようと思うんだよね。」 「ん?そ、そっか。いいんじゃない?だいぶ使い込んだもんね。」 いまいち言葉の意味を理解していない嫁に苛立ち、単刀直入に告げた。 「お前はもういらないってこと。」 「……え?」 嫁の笑みが歪んだ。 まだ信じられないみたいだ。 まあ無理もない。 毎日毎日告白に相槌を打たれていたら不思議に思う。 しかしその察せないところが今の俺にとって何よりもイライラする。 「ちょっとは察しろよ。生きてた頃はもっとデキる女だっただろ?」 「……なんで…?」 嫁の声が震えている。 それすらも煩わしくてたまらない。 「好きって、言ったよね…?」 「はあ?あんなんただの相槌だろうが。相槌以外で一度でも好きって言った覚えねえけど?」 本当のことだ。 この際正直にいうと、別に俺は嫁の事を恋愛対象として見たことなどない。 罪悪感を好意と間違うほど俺は純粋ではない。 「とにかく!このスマホは解約して新しいの買うから。成仏なり消えるなり好きにしろよ。もう十分恋愛ごっこには付き合ってやっただろ?」 嫁はもう何も答えなかったし、応えなかった。 数時間後、俺は嫁の入ったスマホを解約した。 もちろんデータの引継ぎなんてしない。 これで嫁とは一生の後の一生も会うことはない。 本来それが普通なのだ。 おかしなことじゃない。 俺は自由だ。
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