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「えっと、話をまとめると君は俺の死んだ嫁の十年前の姿の俺の嫁ってこと?」
「ややこしいわね。あんたの嫁だって言ってるでしょ。」
「いや……にわかには信じがたくて。」
信じられるわけがないんだ。
「だって、そうだろ。……俺の嫁がこんなに……こんなに可愛いなんて!!」
「あら、ありがとう。」
どんな天のお導き、いや手違いでこんな美少女が爆誕(故)してんだ。おかしいだろ。
ていうかこれが俺の嫁ってことが一番おかしい。
だって俺の嫁ってもっとこう、なんていうか……あれ、どんな顔してたっけ。
「薄情な人ね。どうせ私の顔なんて覚えてなかったんでしょ。」
「そ、そんなことないって。」
「嘘。顔に書いてあるもの。」
「う゛っ。」
嫁はこれでもかと見せつけるようにため息をついた。
「あなた、本当わかりやすいわ。死ぬ前と全然変わってない。」
「そ、そうですか……。」
嫁はさっきよりも大きなため息をついた後、やっと本題に入ってくれた。
「で、わざわざ呼び戻してどうしたの?遺産?遺産の話なの?こういうのってだいたい金絡みだもんね。まあ金は困らないくらいには貯金しといたけど。」
「なんで開口一番で金なんだよ。別に金は関係ねぇよ。おかげさまで金は葬式やっても足りてるよ。ありがとな。」
「だったら何?」
「そ、れは……。」
間違いない。
これは不審者を見る目だ。
いくら俺の信用がないからってあんまりじゃないのか?
確かに俺の言動は不審だけどってこの件もういいよ。
「別に、大したことじゃあないんだけど。」
「大したことじゃないのに呼び戻したの?うっわ超迷惑。」
「ああ悪かったな!色々謝ろうと思っただけで呼び戻しちまって!」
「謝る?」
きょとんと嫁は俺を見つめている。
小首まで傾げやがってくっそ可愛いな。
「だ、だからさ。生きてる間に何もしてやれなかっただろ?だから……色々、悪かったな。」
気恥ずかしくて嫁の顔が見られないから俯いてみる。
今更遅いと罵倒されるだろうか。
それとも、それとも……。
だめだ。どうしよう。どんな顔してるかなんて全然想像つかないから顔見る勇気ない。
「……で?」
「え?」
思わず顔を上げると、嫁はジト目でこちらを見つめていた。
「え?」
え、なにこの感じ。
色々なパターン想定できるほど情報なかったけど、でも流石にこの顔は全く想定してなかった。
「謝られても私もう死んでるし、どうにもできないし何も言えない。」
た、たしかに……。
最初からずっとわかってはいた。
これは俺の自己満足で嫁はそれに付き合わされただけ。
ただそれだけだ。
「……そうだよな。」
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