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「未練っていってもな~。」
外に出てみたはいいものの、未練なんてそうそう見つからなくないか?
ないから成仏したわけだし……。
「絶対尻ポケットに入れないでね絶対よ。」
「わかってるよ……。」
俺だって嫁を自分の尻に押し付ける趣味はない。
というわけでスマホは胸ポケットだ。
画面を外に向けたら俺がギャルゲーのキャラに話しかけてる人に見えそうだと心配だったが、さすがなんでもありアプリ。
通話はイヤホンマイクでできるし外カメに映ったものを例のブラウン管テレビで見れるようになっているらしい。
「久々のシャバはいいわね。」
「服役でもしてましたか?」
はしゃいでいるのはわかるがコイツこんな性格だったか?
俺の記憶だともっと寡黙だったような……。
いや、それは会話が少なすぎただけで本来の嫁はよくわからないボケをかますような不思議ちゃんなのかもしれない。
不思議ちゃん系美少女……俺の好きなジャンルだ。
もしかして嫁との結婚は運命だったのでは……。
そんなわけないか。
「何か思い当たる未練ないの?」
「ない!」
ポケットサイズになってから生前より明らかに声がでかくなったってのとスマホの音量をMAXにしていたせいで俺の耳は無事死亡した。
音量を半分以下に設定し直しておこう。
「思い当たらないなら……そうだ!未練を作るってのはどうだ?なんかすぐ晴らせそうな簡単なやつをさ。」
我ながら名案と思ったが嫁はそうではなかったようだ。
「簡単に晴らせないことだから未練になるんじゃないの?」
ぐうの音も出ない。
「……今日一日街を周って探してみようか。」
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