俺の嫁、消える

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俺の嫁、消える

あの日のことを夢にみた。 その日はここ数年で一番の猛暑だった。 だから、柄にもなく少し高い店のアイスを買って帰った。 鉄面皮に近い嫁の表情も少しは和らぐかもしれない。 出張から帰ってくると、いつもする味噌汁の香りはしなくて代わりにしたのは…強烈な腐臭だった。 部屋の入口で、嫁が天井からぶらさがっていた。 「うわああああああああああああああああ!!!!!!‼」 飛び起きると、嫁の体はどこにもなく臭いもしなかった。 したのは自分の加齢臭くらいだ。 朝から最悪の気分でスマホを起動させた。 最近はバッテリーの消耗を理由に寝る前はスマホをきることにしていた。 そうでないと嫁がうるさいのだ。 一晩中話しかけてきて眠れない、とかならまだいい。 …最近になって嫁がうなされ始めたのだ。 幽霊だろうがスマホアプリだろうが知ったこっちゃないと夜は嫁も眠るのだが、眠るたびきまって深夜に悲鳴をあげて飛び起きるのだ。 最初こそ俺も心配して色々と声かけをしていたが、飽きてからはそれをするのも億劫になっていた。 言い訳にしかならないとわかっているが、これも自己防衛策だ。 お互い睡眠不足で消耗していくのはよくないと言い出したのも嫁だしな。 ただし日中はずっとスマホをつけている。 おかげで同僚からはスマホが壊れているんじゃないかと修理に出すよう勧められた。 ん?修理? そうか!いいことを思い付いた。 名案というほどでもないけれど、今よりは良くなる。 スマホを買い替えよう。
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