俺の嫁、未練探す

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俺の嫁、未練探す

翌朝スマホのアラームがなった。 「早く起きなさい。遅刻するわよ。」 「……うん。」 瞼を開け、ドアの方に視線を向けるがそこには誰もいない。 いつも決まって朝が弱い俺を起こしにきた嫁の姿が、ない。 「早く起きてったら。」 それでも嫁の声はする。 「嫁はもう死んでいないのに。」 「いるわよ。ここに。」 「ん?」 「ここよ、ここ。」 寝ぼけた頭が覚めてきた。 そうだ。嫁は帰ってきたんだった。 「こんなポケットサイズになってしまって……。」 俺のスマホに。 「まだ寝ぼけてるわね?さっさと顔洗ってきなさい。」 「うい。」 言われた通り顔を洗い髭を剃ったところでようやく完全に目が覚めた。 そして昨夜のことを思い出す。 「本当に帰って来たんだなぁ。」 インチキ臭いスマホアプリによって嫁は再びこの世に戻って来た。 ……未練を晴らさないと成仏できないという条件を背負って。 全力で成仏を望む嫁のために俺はこれから嫁の未練を探すことにした。 俺の身勝手でこんなことになったんだ。 そのくらいするのが筋だし、死んだとはいえ夫婦なんだから。 「少しは助け合わないとな。」 生きてる時にすればよかった。
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