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フライング・トーク しくじったのは誰?
喫茶店でふたり
互いの上司を待っている
夏休みに入ったサ店の
席取り役みたいなもんだ
いくつか探りを入れておけと
上司に言われてはいるんだけど
驚いたのは
君のトークのフライングぶり
半刻もすぎた頃には
小学生のときに飼っていたという
ハムスターの名前まで知っている僕
だが そろそろ時間だ
「初対面なのに、まるであなたの彼氏みたいだ。あなたのことで知らないことは、ない気がしていますよ」
僕が話を切り上げたとき
君越しに上司が二人連れで入ってきた
商談は時に笑いも混じり
少しだけ 景気回復を実感した
満足げな上司と席を立ち
見送られる際
君が素早く僕にささやいた
「去年、2ヶ月だけ、同じ会社でした」
ふり向いた僕の腕を
君は顔色も変えずに
こっそりつねった
「……好きだったのに」
「ではまた。次もよろしくお願いいたします」
その場をごまかして
上司の後ろを歩く僕
フライングすぎだよ
君のトーク
出会いまですでに済んでいたなんて!
フライングするのは男だと思っていた
狩猟本能は男のものだろ?
つねられたとこを
なんとなく、さする
標的の旗でも刺されてやしないかと
フライングすぎだよ
君の告白
次回来るのは僕じゃないかもね
フライングすぎだよ
知らない知人
そう これは早いとこ逃げたほうがいい
フライングはフェアプレイの世界じゃ
違反だぜ
仕切り直しはいつかなんて
知りやしないよ
そう 知りやしない
しくじったのは君
しくじらされたのは僕
ちょっとタイプだと思ったのに
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