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イチゴのいじわる
学校帰り 皆で通る道に
甘味処があった
抹茶パフェが美味しいと聞いていた
当時のうちらにとって
美味しいは →→ ボリューム、だった
他校のあの子と初めて
二人だけでファミレスに行ったとき
なんの迷いもなく
ボリューミーなチョコパフェを頼もうとしたら
彼女は「紅茶パフェだって。素敵」と
私の反応は早かった
「あたしはイチゴにする!」
彼女のお嬢感覚に対応できずに
ぺ◯ちゃん感覚で逃げたのだ
彼女は「えー、可愛い」と笑った
それぞれのパフェが来て
てっぺんのイチゴからいった私に
彼女は「たぶんそういくと思った」と
おかしそうに笑った
そして 紅茶色のクリームを
スプーンの先だけですくって
口に運んだ
「それ、やっぱアールグレイ風味?」
「うん。お菓子には、たいていそうだよね」
がんばって交わそうとしたお嬢会話は
しょっぱなから途切れた
なぜなら
最初に食べたイチゴの種ちゃんが
前歯の間にかくれんぼしたからだ
それが気になって
話題探しどころじゃない私
こんなの
歯ブラシでなきゃ絶対取れない
笑った拍子に見られたら
はずかしいんですけどっ
必然的に
会話は少なめ
笑いは歯の見えないお上品さ
となった
──ほんとは話したいこと
いっぱいあったのにな──
その日のために用意していた
見えない花束は
背中にかくしたまま
席に置きっぱなし
後日、他の子と抹茶パフェを頬ばりながら
「医師呼んで
イチゴの種取り出してほしかったわー」
「魚の骨か」
彼女とはその後も会ったけれど
初デートのしくじりは
いつもどこかに引っ掛かり続けて
地の自分をついに出すことなく
終わってしまった
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