27.目覚めたのはあれから

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27.目覚めたのはあれから

 閉じてた目をゆっくり開けると、まず目に入ったのが木製の天井。  デジャヴを感じるのは、以前にも同じようなことがあったからだ。  こうなると、この世界に来た時に目覚めた時のことが昨日のようだ……。  「あ、気が付きましたか?」  ひょっこりと笑顔を見せてきたのはシーナだった。  その顔は不安から安心へと切り替わったような表情だ。  ってことは、ここはギルドの医務室か……きっと心配してくれたんだろな。  体の痛みもすっかりと消え、ゆっくり起き上がったらヴァン達も部屋に入ってきた。  「お、目が覚めたか」  「びっくりしたよー。帰ったらコウジがビーストマスターと戦ったって聞くんだもん」  「とりあえず、気が付いてよかったわ」  ヴァン、バルト、セレナがそれぞれの言葉を発し、セレナが僕の頭を撫でた。  今まで友達はいても家事とかで遊ぶことが少なく、こういう風に接することはなかったから、なんだか嬉しくて……涙が出た。  本当に僕は転生して……この仲間に出会えて本当に良かった。  「え、え、回復したのですがまだ痛いところありますか!?」  「ううん……違う。心配してくれてるのが嬉しいんだ。今までは熱出しても基本一人だったから」  「え、親はどうしたんだ?」  「親は共働きなんだ。僕のために頑張ってくれてるのは理解してたから、あまり心配かけないようにしてたから……」  ハハッと苦笑いしたら、マスターに大きい手でコツンと叩かれた。  「そういう時に頼らないでどうする。悪化したら余計に心配かけるだろう?」  たしかにそうだ。  親の仕事の邪魔をしないように考えてたから、そこまで考えが回らなかった。  僕、反省。  ベッドから降りて立ち上がり、軽く体を動かして異常がないか確認すると、改めてみんなにお礼を言う。  それぞれ笑顔になってくれたけど、バルトに至っては突然(見た目が)美味しそうな焼肉を差し出された。  病み上がりの人に焼肉ってどうなの?  それよりもちろん、スキルが危険信号を発してるわけで。  目が覚めてすぐ食べていいのかではなく、この焼肉自体に、だ。  「さ、お腹空いてるでしょ?遠慮しないで食べなよ♪」  ですよねー!  「うん、ありがたくいただくよ。……バルトが一切れ食べて無事ならね?」  ニコニコ笑顔のままピタッと固まるバルト。  そして、トボトボと料理という名の殺人兵器を持って部屋を出て行った。  まったく……危うく仲間にトドメをさされるところだったよ……もしかして、僕のことが嫌いなのかな?  「まったく、バルトの奴は……とりあえず、無事でよかった。」  「いやぁ……マスターが来てくれなかったらペチャンコか、とてもお見せできない状態になってました」  これは本当のこと。  逃げてもすぐに追いつかれただろうし、戦うという選択肢しかなかったんだよね。  それに、逃げてたら僕は子獣人達を見捨てることになってたし、そんなことしたら一生後悔していた。  それより、今思い出したんだけど……  「あの……子供達はどうなってますか……?」  「安心しろ。多少怪我した者もいたが、全員無事だ」  ホ……よかったぁ~。  ネリアメが襲ってきたときに一目散に逃げて行ったから気になってたんだよね。  「あと、お前の見舞いにも来たぞ。勝手に逃げて行っただけでなく、置いていったことに責任を感じているようだった」  「そうなの?別に責任感じなくていいのに……。まぁ、無事でよかったよ」  とはいえ、わざわざお見舞いに来てくれるなんて嬉しいな。  今までお見舞いなんてしてもらったこと……ん?お見舞い?  「え、ちょっと待って!今ってあれからどの位経ってるの!?」  「む、だいたい三日は起きなかったな」  み、三日って……ギルテシムとの勝負まであと二日しかないじゃん!!  残り二日でAランクを超える実力をつけるって無謀にも程があるでしょうよ……!  それに、グランヴァルツとの約束もあるし……  とはいえ、このまま何もせずにいても……あー、もう!!  「ヴァン!今すぐ僕と組手をお願い!!」  「は、おま……病み上がりのくせに何言ってんだよ」  「そうですよ。今はゆっくり体を休めるべきです」  「でも、僕は実戦経験が圧倒的に足りてない。三日も無駄にしてしまったんだから、残り二日でできる限り埋めないと!」  「とりあえず落ち着け」  マスターにとても威圧感のある、低いイケボイスで言われた。  帯びていた熱が急に冷め、頭が冷静になりだして、焦りから興奮して考えが単調になっていたのに気が付いて、力が抜けてベッドに座り込んでしまった。  僕、何やってんだろ。  「前にも行ったが、無理したら体を壊して動けなくなるんだぞ?お前は何の理由でギルドに入ったんだ?」  ギルドに入った理由……強くなって、助けてくれたみんなの役に……    「……ごめんなさい」  「とりあえずもう少し休め。話はそのあとだ」  「ああ。回復したら組手でもなんでも付き合ってやるから」  かなり焦りすぎたな……ちょっと反省。  とりあえず特訓は後回しでも、グランヴァルツの紹介はしておかないとね。  「みんな、ありがとう。でも、一つだけスキルを使わせて。《二心一体》を」  「《二心一体》?コウジの心にあるもう一つの魂と入れ替わるってスキルですよね?」  「誰になるのか分かったのか?」  「うん、グランヴァルツだよ。自己紹介よろしくね」  あ、全員驚いた顔をした。  まぁ、もう一つの中身がドラゴンだったら普通は驚くよね。  とりあえず使ってみるかなー。  再び立ち上がり、早速スキルを発動させる。  下から上へ風が起こり、僕の毛の色が両耳の先、手足の先、尻尾の先、胸の毛と鼻周りだけ白を残し、残りは赤く染まっていく。  意識がどこかに移動されるのを感じ、僕の目の前は黒一色となった。
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