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39.狐司・ヴァンVSジャドー!
「さって、今度は逃がさないようにしないとね!」
「テメ……もうすでに勝った気でいる気か!」
「あれだけ信じていられたら負けられないからね。相手がどんなに強かろうが」
部活とかはやったことはないけど、運動部のエースってこんな感じなんだろうか?
まぁ、部活は全力を出してやり切る感じだけど、今は命懸けだから根本が違うか。
でも信じて任されるのは変わらないし、こういうのも悪くないか。
それに、すっごく力が湧いてくる!
『条件が一定に到達……スキル《小さな勇者》を獲得』
称号スキル……かな?ここで手に入るか。しかも勇者とか。
まぁ、今はそんな事気にしてられない。本当の生と死のどちらかの戦いなんだから!
ジャドーが踏み込んで一気に迫ってくる。
右手に何かを持っいるようだけど……何も見えない。てことは、魔法でできたなにか?
ダメだ、わからない。
「風月斬!」
何かを持っていると思う右手を思いきり横に振ってきたのを、バックステップでなんとかかわすけど、服と毛が少し切られた。
たぶん間違いない。あれは風でできた剣だ。
うっわ、こっちは武器無しなのにあっちはあるんか!ずっるいなぁ。
「どうした?前みたいな覇気がないんだが?」
「まだまださ。こちとら二度も死にたくないんでね」
とにかく集中だ集中!!
一度深呼吸してから再び向き直すと、ジャドーはすでにその場にいなかった。
周りを見てもその姿はない。
ってことはお約束で……
「オラァ!!」
頭上から降ってきたジャドーが僕の頭を殴りつけ、顔面からフィールドに叩きつけられた。
め、めっちゃ痛い……頭もクラクラする……なんて攻撃力だ。
頭を押さえながら起き上がると、フサフサしてる胸毛?を掴まれ、片手で持ち上げられた。
「ザマァないな?おい」
「ウ……ググ……」
く、苦しい……
うっすら目を開けると、悪い笑顔で僕を貫こうと爪に風の刃を纏わせて構えている。
そうはさせまいと蹴りを放つけど、あっさりとかわされた。
「これで……俺の復讐は完了だ!!」
言葉と同時にジャドーの構えてる手も動き、僕はとっさに目をつぶるけど、なんにも来なかった。
ゆっくりと目を開けると、そこにはジャドーの腕を掴んで止めているヴァンの姿があった。
「ヴァ……ン……?」
「わり……目が覚めるのが遅くなった」
ぶっきらぼうにそう言うヴァンは体力が低下してるのか、すでに息を切らしている。
まぁ、一度ジャドーに乗っ取られて身体を使われてるもんね……仕方ない。
ジャドーは僕を掴んでる手を放し、一旦距離を取った。
「助かったよ。ありがとう」
「これはどういう状況なんだ?普通じゃないことはわかるが」
「簡単に言えば、ヴァンの身体からヴァノの身体に移ったジャドー……かな」
「よし、それだけで充分だ」
さっすがヴァン!理解が速くて助かるわ。
「ふん、この身体より力が劣る奴が加わるか。それだけでこの戦況が変わると思うか?」
「んだと……!?」
「まぁまぁ、ヴァン。そんなの、やってみなきゃわからないでしょ?」
ジャドーのセリフでカチンときたヴァンをなだめる。原因は比べられたことより、身体や声がヴァノだから、本人に言われたみたいだからなんだろうけど。
とにかく再び戦闘態勢に入り、深呼吸を一度してから僕はジャドーに突っ込んでいった。
ジャドーは風魔法を僕に向かって撃ってくるけど、腕で顔面をガードしながら僕は構わず突っ込んでジャドーとの間合いに入った。
傷だらけになったその腕に炎を纏い、アッパーカットを与えた。
しかし、ジャドーは後ろに跳んで衝撃を受け流し、着地した足にそのまま力を入れて一回転してから、空振りの回し蹴りを放ってきた。
しかしそれはただの空振りではなく、衝撃波を生み出すための蹴りだった。
それに気付かなかった僕は、踏ん張りが効かずに風の壁ギリギリまで吹っ飛んでしまった。
ギリギリとはいっても、ヴァンが支えてくれたから壁に切り刻まれることがなかっただけなんだけど。
「あ、ありがと……」
「気を付けろよ?あの野郎は兄貴のスキルを使いこなしてる……なら死角があまりないから真正面からいっても返り討ちにされるだけだ。隙を作るしかない」
「隙って……どんな……?」
隙って言われてもなぁ……そんな頭脳戦、僕はまだよくわからないし……
経験を積めば、いつかできるようになるのかな?
「俺がまずは行く。お前はここだって時に攻撃してくれ。そのためにはよく見てるんだぞ?」
「う、うん。やってみる」
手をグッとして言うと、ヴァンが二ッと笑った。
見える牙が相まって、なんだかかっこよく見えた……
「おい、俺はその身体の奴にちょっとばかし因縁があってな。今度は俺が相手だ」
「チ……まずはアイツをぶちのめしたかったが……まぁいい。そんなに死にてぇなら貴様から息の根を止めてやる」
余裕そうにニヤけるジャドー。
なぜかヴァンの怒りボルテージが上がってるような気がするのは気のせいだろか。うん、まぁわかってるけども。
そんなヴァンも一度深呼吸して落ち着き、真剣な目をしてから一気に向かっていった。
ジャドーはそんなヴァンに格闘や風魔法で応戦しているが、身体をまだ使いこなしきれてないのかヴァンの方が優勢に見える。ヴァンは使いこなしてるって言ってたのにね?
おっと、そんな事考えてるんじゃなくてしっかり見て隙を見つけなきゃ!
ジッと二人の戦いを見つめ、様子を伺うと、ジャドーが小石を踏んで足を少し滑らせた。
ここだ!!
「サンダー……ボルト!!」
天から落ちてきたサンダーボルトがジャドーに当たり、衝撃による強風と砂埃が舞い上がる。
収まってふと見ると、腕をダラントとさせて上を見ている感じのジャドーがそこにいた。
「やった……のか?」
「ヴァン……それフラグ……」
次の瞬間、風が吹いてきて一点に……ジャドーに集まってきている。
そして、ジャドーは地面を殴りつけてきた。
「てめぇら……よくもやってくれたな……」
その言葉とほぼ同時に僕の身体に衝撃が生まれ、吹っ飛んで風の壁によって体を切り裂かれた。
ヴァンは地面に倒れ、頭を踏みつけられている。
「グ……ググ……」
「まずは貴様からだ……」
鋭く尖った爪を構えている。
ヤバイ、このままだとマジでヴァンが死ぬ!
《キュア》で回復してはいるけど、回復が遅すぎる!!
「死ね」
「ヴァーーーーーーーーン!!」
ジャドーの爪がヴァンに突き刺さろうとした瞬間、ジャドーの動きが止まった。
ジャドーの方も理解ができないみたいな表情で震えながらゆっくりともう片方の手で腕を押さえながらを上げていく。
これはいったい……?
「バ……バカな……コイツの意識が……表に……出てきた……だと……!」
まさか……ヴァノが乗っ取られた状態から抵抗してるっていうの?ヴァンが殺されようとして?
これは予想を遥かに超えたブラコンっぷりだわ……
そして、ゆっくりとではあるけど、ヴァノの爪が自分の二の腕に狙いを定め、一気に突き刺した。
悲鳴をあげるジャドーは、傷ついた箇所を押さえて歯を食いしばって痛みに耐えてるようだ。
うっわ……あれって出血多量……とまではいかないだろけど、結構血を失うんでない?
「ぐぐ……くっそぉ……!!俺はもう負けられねぇんだ……負けたら俺はまた……」
また?
ジャドーの過去に何かあったのか?
そんなジャドーは今、何かに怯えた感じに震えている。
「ねぇ、ジャドー?何をそんなに怯えてるの?」
「な……んだと?」
「よかったら教えてくれない?」
「な、なぜ貴様にそんなことを!」
ま、普通はそうだよね。
「いいじゃない。なんだか気になるし」
「……わかってるとは思うが俺は実態の持たない霊体だ」
プイッと顔を逸らし、ジャドーは何かを語り始めた。
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