貴女は向日葵  ~ ひふみ視点

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その日はなんて事ない、いつも通りの仕事帰り。 テレビの占いが良かったとか、 欲しかった写真集が見つかったとか そんな嬉しい事も無かった普段通りの夜。 少し前を歩く女性がふらふらしているのは見えていた。 酔っぱらっているんだろうけれど、夜にふらふらしてたら危ないよ。 なんて思いながら見ていると、彼女は路地裏の自販機へ向かって行った。 そうそう。 水でも飲んで酔いを醒ました方がいいよ。 心の中で呟いて、彼女を通り過ぎようとした時。 チャリンチャリンチャリンッ 地面に落ちる小銭の音が響いた。 いつもなら、そのままスルーしたかもしれない。 麻琴からは、もう無闇に女の子に関わらないで下さいよっ。って釘を刺されている。 でも何故だか、体が自然と動いていた。 おぼつかない足取りで歩いている姿を見ていたからなのか、 ただの直感だったのか、今となっては分からない。 私は彼女の財布から飛び出た小銭を拾い上げ声を掛けた。 『大丈夫ですか?』 私の声に反応し振り返る彼女に小銭を差し出す。 『はい、どうぞ』 『あ、ありがとうございます』 向かい合ったその瞬間、息が止まるかと思った。 『ひ、ひーちゃん…?』 『ゆ、結華……ちゃん』 石本結華。 学生時代に恋い焦がれ、自ら突き放してしまった、大切な大切な人。 そして今もなお、心を囚われてしまっている、その人だった。
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