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私も結華ちゃんも、あまりに突然の事で言葉が出なかった。
私に限っては、息をする事すら忘れてしまうくらいの衝撃だった。
動けずにいる私に結華ちゃんが何かを言おうと口を開いた瞬間。
『うぅっ!!』
『わっ!!ちょ、ちょっと結華ちゃん!?』
久しぶりに逢う結華ちゃんは、とんだ酔っ払いだった。
酔いすぎて吐いてしまった結華ちゃんを近くの公園まで支えて歩く。
『再会がこんな失態なんて…。』
と落ち込み呟いている結華ちゃんは、思いのほか顔色は悪くない。
きっとさっきので少し気分は良くなっているだろう。
仕事柄、酔っ払いの失態を見慣れている私としては、まだ可愛い方だとも思えた。
オッサンの酔っ払いとか最悪だしね。
ひとまず結華ちゃんをベンチに座らせ、さっき買っておいた水を手渡す。
『取りあえずこれ、飲んで?』
『うん、ありがと…。』
ペットボトルのキャップを開け、結華ちゃんが水を飲む。
公園の薄明りでよく分からないけれど、色黒なのは健在なのか。
…白すぎるくらいの肌の色をしている私にとって、
学生時代の彼女の、少し黒い肌は魅力的だった。
『どう?落ち着いた?』
『う、うん』
落ち込んでいるのが明らかに分かる顔。
一つ年上の結華ちゃんは、しっかりしている所を見せたがっていたけれど。
どこか抜けていて、それがとても可愛かった。
そんな学生時代の結華ちゃんが頭をよぎり、思わず顔がにやけてしまう。
『ったく、相変わらずだなぁ…結華ちゃんは』
『だぁって…』
ちょっと拗ねた顔をした結華ちゃんの横顔は、
やっぱり少し大人びていて、思わず胸が高鳴ってしまった。
それを隠したくて、私は空を見上げながら結華ちゃんに言った。
『ま、そんなんなるまで酔うって事は、結華ちゃんも大人になって色々大変って事だね。』
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