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茜先輩
「森宮!」
12月のアンサンブルコンテストに向けて、追い込みの練習をしている時、奏先輩に呼ばれた。
「何ですか?」
手招きする奏先輩の所へ行くと、奏先輩が声を潜めてとんでもない事を言う。
「森宮、来年の夏のコンクール、オーボエ
ソロは森宮で行くから、そのつもりで今から
練習しろよ。」
は!?
「え、だって、麻友先輩は?」
麻友先輩は、2年のオーボエの先輩。
オーボエは各学年1人ずついる。
夏の大会は、1年だけ別で小編成で出場し、2〜3年は合同で大編成で出場するから、オーボエは2人いるはず。
「お前だって聞いてて分かるだろ。
あいつは、あいつなりに一生懸命やってるの
かもしれないけど、音が汚いし、ピッチ
(音程)も安定しない。
来年は絶対に金賞だけじゃなくて、上の
大会に行くつもりで出るから、森宮にソロを
任せたい。
これはまだ内緒だぞ。
木下がやる気をなくすといけないからな。
でも、森宮は自分がソロをやるって自覚の
もとに、今から半年、しっかり練習
しろよ。」
そんな…
私がどんな顔をしていいのかも分からずにいると、奏先輩は優しく微笑んで、私の頭をくしゃくしゃと撫で回す。
「そんな不安そうな顔するな。
森宮なら大丈夫だから。
俺の耳を信じろ。」
奏先輩の手が暖かくて、なんだか頑張れそうな気がしてくるから不思議。
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