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奏先輩は、音楽教室ではエレクトーン専攻。
プロのデモンストレーターのように演奏が上手で、夏のコンクールでは、毎年楽器店大会で最優秀賞を取り、地区ファイナルへと進む。
今年は私も同じく地区ファイナルへの切符は獲得したけど、私の場合はそこまで。
奨励賞という名の参加賞と思い出を胸に帰ってきた。
でも、奏先輩は違う。
地区ファイナルでも、金賞を取り、YECファイナリスト選考会へと進んだ。
その時、演奏していたのが、この楽譜『流転の王妃』だ。
楽器店大会で聴いた時、すごく素敵な曲だから私も弾いてみたかったけど、どこを探してもピアノ譜やバイオリン譜はあるのに、エレクトーン譜は売ってない。
コンクールのプログラムをよく見ると、『編曲者:高梨奏』と印刷されていた。
奏先輩のオリジナルかぁ。
かっこいいアレンジ。いいなぁ。
だから、地区ファイナルで会って喋ってる時に言ったんだ。
「奏先輩の曲、すっごくかっこいいですよね。
私も弾いてみたいと思って楽譜探したのに、
どこにも売ってないんですよ〜。」
「くくっ
だよな。
俺も探した。」
奏先輩は、背も高いし、すごくかっこいい。
ちょっと近寄り難いくらい。
だけど、笑うと、目元がくしゃっと細くなって、すごく優しくなる。
だから、吹奏楽部の女子は、ほとんどみんな奏先輩に心奪われてる。
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