【0章】 師匠と僕

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【0章】 師匠と僕

「お師さん、なに書いてるんです?」  店の戸締りを確認して灯りを消し、2階に上がると、師匠がテーブルで何か書いていた。 「ん?これかい?最近、気まぐれで物語を書いててね。私の若い頃の思い出みたいなものかな。少し脚色してあるけどね。」  そう言って師匠は僕を見てふふっと笑った。 「僕、読みたいです!書き上がったら一番に読ませてもらえますか?」  僕は食いぎみに聞いた。だって尊敬する師匠の物語だ。読みたいに決まってる! 「そんなに面白くないかもしれないけどね。・・・そうだ、良かったら途中までだけど読んでくれるかい?修正箇所なんかあれば教えてくれるとたすかるよ。」 「本当ですか!読みたいです!」 目を輝かせて答える僕に師匠は優しく言った。 「だけど今日は遅いし、明日店番しながら読めばいいよ。明日は採取もないし。」  師匠は立ち上がって、奥のタンスの引き出しを開けながら僕に言った。 「今まで書きためてる分はここに入ってるから好きな時にに読むといい。」  いいながらさっき書いていた紙を引き出しの一番上におくと、引き出しを閉めて言った 「私はそろそろ寝るよ。マオもあまり遅くならないようにね。おやすみ。」 寝室の扉へ手をかける師匠へ 「おやすみなさい!」 と返事をかえした。師匠は微笑みながら寝室へと消えていった。 さて。  僕は貯めてある水樽から桶に水をすくって、乾いた布を濡らして顔と体をざっと拭いた。  寝室で新しい下着と楽なパンツを履き、机に向かう。今日、師匠と採取した薬草で新しいものがあったから忘れる前に手帳に書くためだ。    手帳と言っても紙の束に穴を開けて麻紐を通した簡単なものだけど。  ここは国の最西の村、ニクロ村。。。の外れも外れ。村のそばの森の裾にポツーンとある薬屋。  一階が店舗で二階が住居。  店主はドウ。  僕の薬学の師匠であり、命の恩人で、唯一の家族だ。年齢は不明。本人いわく、コキの花がさく季節を50回は数えたから70は過ぎているそうだ。    濃い茶色の髪には白髪が混じっているけど、まだまだ若々しい。週に何度も森に入るし薬の精製もなかなかの重労働だ。きっと僕よりずっと体力は上だ。。。  瞳は深い藍色、ひとつに縛った髪、顎に長めの無精髭。身長は170cm位。渋い!見た目は渋いけど、優しい山男といえばわかるだろうか。。。? そして師匠がすごいのは精霊様に愛されていること! しかも地と水の2精霊!! 精霊様お一人でもすごいことなのに、お二人なんて! 僕もたまに何かの気配や視線を感じたことはあるけど、お姿を見たことはない。 師匠は、僕ならそのうち会えるって言ってくれた。 早くお会いしたいもんだ。
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