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母乳を飲んで、お腹がいっぱいになったレイチェルは、ウトウトしはじめた。
ブラッドレー夫人が、レイチェルの背中をトントンと叩いて、ゲップを出させた。そのあと、レイチェルは大きなあくびをして寝てしまった。
ブラッドレー婦人は、寝室のベッドにレイチェルを寝かした。
ミリーは、何しにここに来たのかを、急に思い出した。
「ブラッドレー婦人、アレクシア妃がお呼びしています。お部屋へご案内致します」
「今、寝たばかりの娘を、連れて行くわけにはいきませんね。どうしましょう・・・」
「僕が見てあげるよ」
「エドワード王子は、私と一緒に行くんですよ。」
ミリーは、王子の手を取ろうとしたが、逃げられた。
「やだ!ここにいる。レイチェルと一緒にいたい」
「エドワード王子様に、レイチェルを見てもらいましょうか。」
ブラットレー婦人が言った。
「仕方ないですね。エドワード王子、すぐにもどります。あと、レイチェル様を起こさないで、静かに待っていてくださいね」
「うん、わかっている」
「お願いしますね。小さなナイト(騎士)さま」
ブラッドレー婦人は王子の頭を、優しく撫でた。
「うん!まかせて。いってらっしゃい」
王子は手を振って、二人を見送った。
ブラッドレー婦人とミリーは、王妃の部屋へ行った。
王子は一人になると、エアー剣をかざして、身振り手振りで見えない敵をやっつけていた。
「えいっ。やあー!僕はナイトだから、強いんだよ。」
レイチェルの寝ている、ベッドのそばで、王子は一人で動き回っていた。
「僕のこと見てくれた?格好いいでしょ。
ここには、ウイリアムという怖い人がいるんだ。
心配しなくても大丈夫だよ。僕がやっつけて、レイチェルを守ってあげるからね」
王子がベッドに飛び乗ると、少しベッドが揺れた。
揺れに驚いたレイチェルは、ビックリして目を開けると、お母さんがいないのに気付き、泣き出した。
「・・・あう゛・・う゛あああああああああーーーーーーん」
「え?・・え・・どうしよう。泣かないでよ・・・」
王子は大きな鳴き声に耐え切れず、両手で耳をふさいだ。
「ふ・・ぎゃーーああああああん。」
レイチェルの泣き声は、どんどん大きくなっていった。
「ミリー、すぐもどるって言ったのに・・・。早く帰ってきて・・・」
どうしたらいいのかわからず、王子も泣きそうになる。
耐え切れずに、王子はベッドから降りると、扉へ走って行った。
「うえええええん・・・びえーーーーーーん・・・」
王子は扉のノブをにぎると、ブラッドレー夫人の顔が浮かんで、頭をなでてくれたのを思い出す。
「僕はナイトだ!」
扉を開けずに、再びレイチェルのいる、ベッドに戻った。
レイチェルは毛布を足で蹴って、手足をバタバタしていた。
「わぁぁぁぁあーーーーん」
王子は、そっとベッドにのぼった。
「レイチェル、泣かないで。」
王子は、レイチェルの頬に優しくふれ、手で流れる涙を拭った。
レイチェルは、頬に王子の手が当たって、ビクッとした。
そして、目を開けてあたりを見た。
目の前にいる王子の手を、レイチェルはギュッと握った。
「ウエッック・・・グスッ・・グスッ・・・」
すると、安心したのか泣き止んできた。
「泣きやんだのかな?」
レイチェルは手を離さず、王子の顔をじっと見た。
王子もレイチェルの顔を覗き見ると、琥珀色の大きな瞳が、涙で濡れてキラキラ光っていた。
「はぁー・・・よかった」
王子は、レイチェルが泣き止んで、安堵した。
「あーあう・・、あーん・・・」
「何?僕は、エドワードって言うんだよ。エドワード、わかった?」
「あう、あう?」
「エドワードだってば、エドワード!エドワード!」
赤ちゃんがまだ喋れないという事が、王子は知るはずもなく、ムキになって、名前を何度も言う。
「キャッ、キャッ」
あ、え・・・なに、笑っている。かわいい。
「あ・・ふぁー・・・」
レイチェルは、あくびをすると寝てしまった。
寝ているレイチェルを見ていたエドワード王子も、だんだん瞼が重くなってきた。目を閉じると、パタンと倒れて、レイチェルと並んで寝てしまった。
エドワード王子とレイチェルの手は、ずっと繋いだまま離れずに、仲良く夢の中へ。
ガーデンパーティの三ヶ月後
王と王妃が乗ったフライングシップが墜落した。
大破し燃え、乗っていた人全員が死亡した。
王と王妃の突然の悲報に、国中が悲しみに暮れるなか、次期王に即位したのは、王の双子の弟ウイリアムだった。
新しい王は、ただちにフライングシップの、飛行と製造の禁止令を出した。
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