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ミリーは湖へ目を向けると、フライングシップは、まだ来ていなかった。
ほっとして、一安心した。
船着き場には、造船会社の人達の歓迎のために、城からたくさんの人が来ているのが見えた。
いつまでも、王子から離れているわけにはいかない。
ミリーは椅子から立ち上がり、四阿から出ると、王子のいる船着き場へと歩いて行った。
以前、警護の人が黙って側にいられるのが耐えられなくて、話しかけたことがあった。当たり前だが、仕事中に話しかけるなと言って怒られた。
そう言えば、最初に話しかけてきたのは警護だったわよね・・・。
そばに王子がいないから、今は仕事中ではないということなのだろうか?
なんにせよ、警護にも色んな人がいるということなのだろう。
船着き場に着くと、ミリーは王子に声をかけた。
「申し訳ございません。エドワード王子」
「あ!ミリー。起きたの?」
「しー!しー!」
無邪気に大きな声で言う王子に、ミリーは慌てた。
しかし、寝不足で寝てしまったのは事実なので、言い返せなかった。
湖の先、川から2艘の船が湖に近づいて来た。
1艘はフライングシップだ。
船着き場に船が付くと、歓声と拍手があがる。
到着してしばらくすると、船から人が降りて来た。
フライングシップからは、造船会社の社長家族が、普通の船からは、造船会社の従業員と家族が降りて来た。
「ミリー、どうして飛んでいないの?」
王子はフライングシップが、飛んでいるところを見たかったのだ。
そう言われても、私にも理由はわからない。
「どうしてでしょうね。残念ですが、私にもわかりません。」
造船会社の社長のランディ・ブラッドレー氏と父親は、フライングシップを造ったことで、前王に認められて、貴族の称号を頂いた。
貴族になったことで、息子のアルフレッドは、上流階級の人たちが通う学園に入学することが出来た。学園に入学すると、マクシミリアン王とアルフレッドは同級生となり、親友になった。
造船会社の社長家族と数人の技術者は、城にしばらく滞在する。
フライングシップの操縦を、城の操縦者に教えるためだ。
マクシミリアン王は、フライングシップから下りてきたアルフレッドを見つけると、歩み寄って名前を呼んだ。
「アルフレッド!」
「マクシミリアン!」
二人は名前を呼び合うと、堅く握手をして肩を抱き合い、再会を喜んだ。
「久し振りだな!」
「元気だったか!」
「ああ、そうだ。家族を紹介するよ。父のランディ、妻のケイトリン、そして娘のレイチェルだ」
「おいおい、黙っていたなんて、みずくさいじゃないか。いつ結婚したのだ。まったく、お前はパーティーに招待しても、一度も来ないではないか」
「すまない。パーティーは苦手なんだ」
「そんなことは、知っている。が、まあいいさ、こうして再会出来たのだからな。
エドワード。この人が、船を造ってくれたアルフレッドだ。挨拶しなさい」
呼ばれて、エドワード王子が王様の傍に来た。
「初めまして。エドワード・フィリッツクリフォード、4歳です」
ニッコリ笑って王子は、挨拶すると右手を差し出した。
「アルフレッド・ブラッドレーです。殿下」
そう言うと、王子とアルフレッドは握手した。
アレクシア妃は、ブラッドレー夫人に話しかけた。
「ブラットレー婦人。娘さんは、何ヶ月ですの?」
王妃に声をかけられて、ケイトリンは少し緊張して答えた。
「はい、6ヶ月です。」
アレクシア妃は、ケイトリンの抱いているレイチェルの顔を覗いた。
「スヤスヤと寝ているわ。かわいいわね。」
「アレクシア妃は二人目ですか?」
「ええ。11月が予定日ですわ」
アレクシア妃は、少しふっくらしたお腹をさすりながら言った。
「ミリー、早く船の中見に行きたい」
王子は少しイライラして、ミリーのスカートの裾を引っ張りながら言った。
「お話が終わるまで、もう少し待っていて下さい。聞いてみますから」
「やだ!もう待てない。船、見に行こうよ!」
「エドワード王子、かってに船に入っては怒られます」
「殿下、船が見たいのですか?」
一人の男性が、声をかけて来た。
ランディ・ブラットレー、造船会社の社長だ。
「うん、見たい!行ってもいい?」
王子は目をキラキラとさせて、ピョンピョン跳びはた。
「殿下。では、私が船の中を案内しても、よろしいでしょうか。」
ランディ氏は、畏まって言った。
「うん!」
エドワード王子とミリーとランディ氏は、フライングシップへ入って行った。
城の人達と造船会社の人達は、ガーデンパーティー会場のある、城の中へ行った。
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