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パーティー会場の少し離れた場所に、天幕のテントがあった。
テントの中には、マクシミリアン王とアルフレッドが、テーブルに座って談笑していた。
テーブルの上には、たくさんの食べ物が用意されていた。
「頭の固い年寄りたちが許してくれなくて悪かった。こんな形で、ねぎらうことになってしまって、すまない。」
「謝ることないさ。みんな初めて城に入れると言って、喜んで来たんだ。それに、形式的なパーティーでなくて、これで良かったさ」
「そうか、楽しんでもらえているのならば、よかった。
それよりも、船の完成を急がせて、無理をさせてしまった。」
「無理なんて、それより・・・」
「飲み物を持ってきてくれないか。」
マクシミリアン王が、空になったコップを持ち上げて、ボーイに言った。
「畏まりました」
そう言うと、ボーイはテントから外に出て行った。
「アルフレッド。私の頼みを聞いてくれないか」
王はボーイがいなくなると、改まった声でアルフレッドに言う。
「王様の頼みを断るわけにはいかないだろう。でも、頼みにもよるぞ」
「ああ、そうだな。
一年前、私の両親が死んだのは知っているな。病死と公表したのだが、本当は毒殺だった。調査はしているが、犯人は、まだ捕まっていない。
そして半年前。息子が過って階段から落ちた。そばにいた子守が守ったので、息子に怪我はなかったが、子守が足を骨折した。
怪しい者を不審に思えば、みなが怪しく思えて誰を信用して良いのか、わからなくて困る。」
そして、王は小声だが、はっきりと言った。
「アルフレッド、私の身に何かあったら、息子を頼む。」
その言葉を聞いたアルフレッドは、否定も肯定も出来ず、目を見開いたまま黙っていた。
そこへ、ボーイが酒を持って戻って来た。
「さあ、飲もう。乾杯しよう」
王子は城へ帰る間、ずっとフライングシップのことを話していた。
王子は上機嫌だった、が、急に黙って、ミリーの顔を見て言った。
「ミリー、のどかわいた」
「パーティ会場で、ジュースを貰いましょう。がまん出来ますか?」
「うん。オレンジジュースがいい」
「はい。」
今日は天気だから、のども渇くはずだ。
気づいてあげられなくて、申し訳なかったと、ミリーは思った。
城の門に入ると、警護は気が付くと、いなくなっていた。
王子とミリーが、パーティー会場に着いた。
「ミリー。つかれた、もう歩けない」
ミリーは、空いているイスを見つけると、王子を座らせた。
「いまジュースを貰ってきますから、イスに座って待っていてください。いいですか、絶対にどこにも行かないで下さいね」
「うん。わかった」
ミリーは、急いでジュースをもらいに行った。
給仕をしている、メイドに声をかけられた。
「ミリー、ミートパイ食べない?」
そういえば、もうお昼の時間だ。王子はお腹が空いただろうか。
「エドワード王子にジュースを持って行ったら、聞いてみるわ」
「早くしないと、無くなりそうよ」
「ありがとう。」
ミリーが、ジュースを持って王子の元へ戻ると、王子はいなかった。
ああああ、もうー!どこに行ったの?
やはり、一人にするべきではなかった。
パーティ会場を見渡すも、会場にはたくさんの人で、王子一人を捜すのは難しそうだった。
「エドワード様」
小声で名前を呼ぶ。
「どうしたね。」
男の人に声をかけられた。
王子を探していると、言っても良いものか迷う。
「エドワードという4歳の男の子なのですが、知りませんか?」
「さぁ、あっちで子供たちが遊んでいるから、行ってみたらどうだ」
行ってみると、何人かの子供がテーブルの下へ入ったり出たりして遊んでいた。
「エドワードって男の子知らない?」
子供達に聞いてみた。
「ううん。知らない」
「4歳くらいの男の子、見なかった?」
「知ってる?」
「知らな~い」
子供たちは口々に言う。
「ありがとう」
見つからない、一体どこに行ったというのだろうか。
探し回っていると、王妃に声をかけられる。
「ミリーどうかして」
「あ・・。」
どうしよう、王子とはぐれてしまったとは言えない。
「ふふ。エドワードなら、『父上がいる!』と言って城の中へいきましてよ。そこにいるのにね。」
テントの中に、王様とブラッドレー氏が、お酒を飲みながら話しているのが見えた。
「ミリー、もう少ししたら部屋に戻るので、ブラッドレー婦人を私の部屋へ連れてきてくれるかしら。」
「はい。畏まりました」
ミリーは手に持っていたジュースを一気に飲むと、空のコップをボーイに返すと、王子を探しに、城の中へと走って行った。
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