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城の中に来たけれど、広い城を一人で探すとなると、途方に暮れる。
王子探しを手伝ってもらう人を探すものの、城の中に人はいなかった。
困ったな。
メイドに一緒に探してもらおうと声をかけようと思ったが、パーティーで忙しそうに働いている所をじゃまするわけにもいかない。
仕方ない、一階から順番に上の階まで探そう。
ミリーは、城中探し回った。一階、二階と歩き回って、三階の渡り廊下を歩いていると。
いた!
廊下に座っている王子を、やっと見つけた。
「エドワード王子、探しましたよ。黙って居なくならないでください!」
私を見て、王子が逃げないなんて・・・。
おかしい、何かあったのだろうか?
「・・・ミリー」
王子はひどく怯えていて、今にも泣きそうな顔だった。
「心配しなくても良いですよ。安心して下さい。私が来たからもう大丈夫です。」
震えている王子をギュッと抱きしめ、ポンポンと優しく背中を叩いた。
「抱っこして?」
「まったく。エドワード王子はもうすぐ、お兄さんになるのですよ。今日だけ、特別ですよ」
抱き上げると、王子は少し震えていた。
安堵したのか、私の胸に顔をくっつけて泣き出した。
よほど怖かったことがあったのだろう。
王子が泣き止むのを待って、降ろした。
「さぁ、お部屋に戻りましょう」
「父上なのに、父上じゃなかった・・・」
「・・・え?どういう事ですか?」
ミリーは王子に、何があったのか聞いた。
ミリーがジュースを取りに行ってしまうと、エドワード王子は、パーティー会場を見ていた。すると、城の上の階の渡り廊下に、王様がいるのが見えた。
「あっ、父上だ!」
王子は椅子から降りて、駆け出した。城の中に入って行くと、王様を探しに行った。
王様を見つけた王子は、後ろから、そっと忍び寄り近づいて行った。
「父上、見つけた!」
王子は笑いながら、後ろから抱きついた。
「誰だ、お前は」
父上だと思っていた人は、怖い顔で睨んだ。
「父上・・・でない?」
王子はその場で固まってしまった。
父上だと思った人は、怒って王子をつまみ上げた。
「良く見ろ。お前は父親の顔も知らないのか。私はウイリアムだ!間違えるな!!」
ウイリアムはそう言うと、王子を投げ捨てて行ってしまった。
と、言うことらしい。
王様は一卵性の双子だ。王様が兄のマクシミリアン陛下、弟がウイリアム様。
ウイリアム様は王子にとっては叔父にあたる方だ。
城には住んでいないので、王子は知らなかったのだろう。
それに、ウイリアム様が城に来ている事は、聞いていなかった。
「私は、ウイリアム様には、お会いしたことはないのですが、御二人は見分けがつかないほどそっくりだそうですね」
「うん、父上だと思ったんだもん。でも、全然ちがった。」
よほど怖かったのだろう、王子はまだ少し震えている。
「エドワード王子。いきなり後ろから抱きついたら、誰だってビックリして怒ります。あとでウイリアム様に謝りにいきましょう。ねっ!」
「え・・・やだ、やだやだ!!!」
首を振りながら、嫌がる王子をなだめる。
「私も一緒に行きますから、怖がらなくても良いですよ。謝りますよね?」
ミリーはニッコリ笑って、王子の返事を待った。
「う、うん・・・謝る・・・」
「さあ、ブラッドレー夫人の部屋に寄ったら、お部屋に戻りましょう」
ミリーが、ゲストルームの扉を、コンコンコンと叩く。
「はい、どうぞ」
扉を開けると、ソファに座っている人がいた。ブラッドレー婦人だ。
王子は部屋の中へと、スタスタと入って行った。ミリーも後に続いた。
婦人に抱かれた赤ちゃんは、母乳を飲んでいた。
「エドワード王子、おとなしくして下さいね」
「わかっているよ。ねえ、この子の名前はなんて言うの?」
王子はブラッドレー夫人に、訊ねる。
「レイチェル・ブラッドレーですよ。」
ブラッドレー夫人が答えた。
「レイチェル。僕は、エドワード・フィリッツクリフォード。4歳、もうすぐ5歳になるんだ。」
王子は、指を広げた手を、レイチェルに見せる。
だが、王子は、赤ちゃんが母乳を飲んでいるのを見て、あることを思い出す。
「ねえ、ミリー。僕のジュースはどこ?」
「ジュースを持って行ったら、いなくなったじゃないですか。
私が飲みました。後で、また持ってきます。」
「今、飲みたい!」
王子は、不機嫌になってミリーを見上げた。
「そこのテーブルにある、水差しの水でよろしければ、飲んでください」
ブラッドレー婦人が言った。
「うん!飲みたい、いいの?」
「はい。どうぞ」
「すみません、頂きます。」
ミリーは、コップにお水を注いで王子にわたした。
王子は、コップを受け取ると、ゴクゴクとのどを鳴らして一気に飲んだ。
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