0.ガーデンパーティー -序章-

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母乳を飲んで、お腹がいっぱいになったレイチェルは、ウトウトしはじめた。 ブラッドレー夫人が、レイチェルの背中をトントンと叩いて、ゲップを出させた。そのあと、レイチェルは大きなあくびをして寝てしまった。 ブラッドレー婦人は、寝室のベッドにレイチェルを寝かした。 ミリーは、何しにここに来たのかを、急に思い出した。 「ブラッドレー婦人、アレクシア妃がお呼びしています。お部屋へご案内致します」 「今、寝たばかりの娘を、連れて行くわけにはいきませんね。どうしましょう・・・」 「僕が見てあげるよ」 「エドワード王子は、私と一緒に行くんですよ。」 ミリーは、王子の手を取ろうとしたが、逃げられた。 「やだ!ここにいる。レイチェルと一緒にいたい」 「エドワード王子様に、レイチェルを見てもらいましょうか。」 ブラットレー婦人が言った。 「仕方ないですね。エドワード王子、すぐにもどります。あと、レイチェル様を起こさないで、静かに待っていてくださいね」 「うん、わかっている」 「お願いしますね。小さなナイト(騎士)さま」 ブラッドレー婦人は王子の頭を、優しく撫でた。 「うん!まかせて。いってらっしゃい」 王子は手を振って、二人を見送った。 ブラッドレー婦人とミリーは、王妃の部屋へ行った。 王子は一人になると、エアー剣をかざして、身振り手振りで見えない敵をやっつけていた。 「えいっ。やあー!僕はナイトだから、強いんだよ。」 レイチェルの寝ている、ベッドのそばで、王子は一人で動き回っていた。 「僕のこと見てくれた?格好いいでしょ。 ここには、ウイリアムという怖い人がいるんだ。 心配しなくても大丈夫だよ。僕がやっつけて、レイチェルを守ってあげるからね」 王子がベッドに飛び乗ると、少しベッドが揺れた。 揺れに驚いたレイチェルは、ビックリして目を開けると、お母さんがいないのに気付き、泣き出した。 「・・・あう゛・・う゛あああああああああーーーーーーん」 「え?・・え・・どうしよう。泣かないでよ・・・」 王子は大きな鳴き声に耐え切れず、両手で耳をふさいだ。 「ふ・・ぎゃーーああああああん。」 レイチェルの泣き声は、どんどん大きくなっていった。 「ミリー、すぐもどるって言ったのに・・・。早く帰ってきて・・・」 どうしたらいいのかわからず、王子も泣きそうになる。 耐え切れずに、王子はベッドから降りると、扉へ走って行った。 「うえええええん・・・びえーーーーーーん・・・」 王子は扉のノブをにぎると、ブラッドレー夫人の顔が浮かんで、頭をなでてくれたのを思い出す。 「僕はナイトだ!」 扉を開けずに、再びレイチェルのいる、ベッドに戻った。 レイチェルは毛布を足で蹴って、手足をバタバタしていた。 「わぁぁぁぁあーーーーん」 王子は、そっとベッドにのぼった。 「レイチェル、泣かないで。」 王子は、レイチェルの頬に優しくふれ、手で流れる涙を拭った。 レイチェルは、頬に王子の手が当たって、ビクッとした。 そして、目を開けてあたりを見た。 目の前にいる王子の手を、レイチェルはギュッと握った。 「ウエッック・・・グスッ・・グスッ・・・」 すると、安心したのか泣き止んできた。 「泣きやんだのかな?」 レイチェルは手を離さず、王子の顔をじっと見た。 王子もレイチェルの顔を覗き見ると、琥珀色の大きな瞳が、涙で濡れてキラキラ光っていた。 「はぁー・・・よかった」 王子は、レイチェルが泣き止んで、安堵した。 「あーあう・・、あーん・・・」 「何?僕は、エドワードって言うんだよ。エドワード、わかった?」 「あう、あう?」 「エドワードだってば、エドワード!エドワード!」 赤ちゃんがまだ喋れないという事が、王子は知るはずもなく、ムキになって、名前を何度も言う。 「キャッ、キャッ」 あ、え・・・なに、笑っている。かわいい。 「あ・・ふぁー・・・」 レイチェルは、あくびをすると寝てしまった。 寝ているレイチェルを見ていたエドワード王子も、だんだん瞼が重くなってきた。目を閉じると、パタンと倒れて、レイチェルと並んで寝てしまった。 エドワード王子とレイチェルの手は、ずっと繋いだまま離れずに、仲良く夢の中へ。 ガーデンパーティの三ヶ月後 王と王妃が乗ったフライングシップが墜落した。 大破し燃え、乗っていた人全員が死亡した。 王と王妃の突然の悲報に、国中が悲しみに暮れるなか、次期王に即位したのは、王の双子の弟ウイリアムだった。 新しい王は、ただちにフライングシップの、飛行と製造の禁止令を出した。
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