雨宿りびより

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雨宿りびより

「ばしゃああぁぁぁ」 ───・・・そうきたか。 7月最後の金曜日。 夕方に降りだした雨と風は夜が深くなるにつれ強まるばかりだった。 会社を出てすぐに持っていた傘が折れたため、彩木衣緒(あやきいお)は近くのコンビニで傘を買ったのだった。ビニール傘の倍の値段がしたが、丈夫そうな黒くて大きい傘にした。 新しい傘をさして折れた傘を公園のゴミ箱に捨てていたら、強風と共に『バッ』と(いさぎよ)い音がした。 見上げると買って数秒しか経っていない傘の布部分がペラッとめくれ上がって風に吹かれていた。 あらぬ方向に折れ曲がり、さながら現代アート作品のようになった金属の骨の隙間から、分厚い雲のフィルターに覆われた暗い夜空が見えた。 ───レインコートにすればよかった。傘、こんな日に使っちゃってかわいそうだったな・・・特に買った傘は、傘として数秒しか活躍できなかったし。 ゴミ箱に二本の傘を入れながら申し訳なく思った。 その後一応頭頂部だけでも守ろうと、三角形に畳んでポーチに入れていたコンビニ袋を頭に乗せ、駅に向かって歩いていた。 そこをすれ違った自転車が大きくて深い水溜まりを高速で走り去り、思い切り水をかぶったのだった。 ───こんな日に自転車に乗るとはなんたるチャレンジャー・・・何かの修行なのかな・・・「嵐の日にチャリで爆走してみた」とかって動画サイトに載せるのかな・・・でもあの人転ばないか心配だな・・・。 「彩木さん。」
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