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鈴太郎はポストから郵便物を取り出すとエントランス奥にある扉に向かった。その扉はまるでテーマパークのアトラクションの建物にあるような大きな木の扉だった。
そのようなアトラクションでは並んでいた客達がアトラクションの建物に入ると、まず部屋に集められ、衣装を着た案内人によってアトラクションの世界観を説明するイントロダクションが行われる。
「さあ、あの扉を開けて冒険に出かけましょう!」
案内人は手を広げるアクション付きでそう言って客達をワクワクドキドキの冒険へと誘うのだ。
衣緒はここはそれに近い場所のように感じた。
───あの大きな扉を開けたら、たくさんのドキドキが待っている・・・もう既にかなりドキドキしてるけど・・・。
鈴太郎が鍵を開けると、
扉は自動で観音開きに開いた。
奥には木目調のエレベーターがあり、衣緒が後について乗り込むと鈴太郎はボタンを押して扉を閉めた。『3』と書かれた丸いボタンが光っていて、そのボタンまで木の模様をしていた。
───エレベーターで二人きり・・・気まずい・・・でも葉吉さんのお部屋に着いてしまうのも緊張する・・・どうしたらいいのか・・・。
衣緒がそんなことを悶々と考えているうちにエレベーターはあっという間に3階に着いた。
鈴太郎はエントランスと同じようなオレンジ色の照明が灯った廊下を一番奥のドアまで進むと鍵を開けた。
このドアも木で出来ていて、長方形ではなく上部が半円状になっているアーチ形をしていて、格子窓がついていた。
「散らかってるけど、入って。」
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