雨宿りびより

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「お邪魔します・・・。」 鈴太郎は衣緒がドアの内側に入ったことを確認すると、靴を脱いで玄関から近いドアに入って行った。そのドアも玄関と同じ木製のアーチ状で、部屋の壁は白かった。 衣緒がどうしたものかと玄関で立ち尽くしていると彼は何かを手にすぐに戻ってきた。 「これタオルと服。シャワーここだから。トイレはそっち。濡れた服は浴室乾燥で乾かせばいいから。」 そう言ってタオルと着替えを渡すと先程とは違う奥のドアに入っていってしまった。 「あの・・・。」 衣緒はとりあえず靴を脱いで揃えると、シャワーがあると説明された手前のドアを開けてみた。そこは洗面所で奥にお風呂があった。 ───シャワー・・・上司の家で!?友達の家でも気を(つか)ってしまうのに・・・でも言ってもらったのにお借りしないのは失礼・・・?けど、帰る時にまた濡れるから・・・。 そんなことを考えているうちに鈴太郎が別室から出てきた。部屋着に着替えていて、いつもとは違う姿が新鮮だった。衣緒がつい見てしまっていると、彼は彼女を見つめて少し考えた。 「あれ?どうした?・・・そっか、ごめん、お湯出るようにしないと。」 そう言ってパネルのボタンを押すと、『リロリロリロリン♪』と音楽が鳴り、女性の声で『電源が入りました。』との宣言がなされた。このファンタジックな雰囲気のマンションでデジタルなその声を聞くのは結構な違和感があった。
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