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あまり時間をかけるのも申し訳ないと思い、洗面台に髪の毛を落としていないかチェックし、洋服をハンガーにかけ浴室に干すと急いで洗面所から出た。
廊下を進み奥に入って行くと、鈴太郎が声をかけてきた。
「服、かけた?」
「はい。服借して頂いてありがとうございます。」
「浴室乾燥スイッチ入れてくる。」
彼が立ち上がると衣緒はドキッとした。よく見ると彼の部屋着は借りた部屋着と色違いだったのだ。ベージュのTシャツにダークブラウンのハーフパンツ、胸ポケットとサイドラインの柄はカーキにオフホワイトのボタニカル柄。
───ペアルック・・・。
自分の心の声が呟いたその言葉に胸がざわざわした。
鈴太郎は戻ってくるとその場で立ったままの衣緒に声をかけた。
「座って。夕飯は食べたよな?」
「はい。会社で適当に。」
「麦茶と水と、あったかくてよければハーブティーもあるけど。」
「お、お構いなく。」
いつもにも増して小さな声しか出なかった。
「何がいい?」
再び尋ねてくる。
───葉吉さん、ハーブティー飲むんだ・・・。コーヒーのイメージだったな。ハーブティー好きだけど、手間かかりそうだから・・・
「・・・麦茶を、お願いします。」
「うん。座ってて。」
───俺がブレンドしたハーブティー飲んでほしかったかも・・・まあ、暑いしな。・・・にしても部屋着、白っぽいのばかりだから一番透けなそうなグレーを渡したけど、やっぱりぶかぶかで、首周りが開いちゃってるな・・・。気にしてるかな。あんまり見ないようにしないと・・・。でもなんか小学生みたいでかわいいよな・・・。
鈴太郎は彼女に背を向けて冷蔵庫を開けながら、胸が疼くのを感じた。
衣緒は彼が手で示したグリーンの丸クッションに座ると、部屋の中を見て思わず声が出そうになった。
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