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「・・・。」
───えーと?
衣緒はその言葉の意味を考えた。
「・・・あ、いや、仕事のリサーチとしての買い物ってこと・・・。」
鈴太郎は慌てて説明した。
───なんで、心の声がそのまま出ちゃったんだ!?まるで砂時計の砂が下に落ちるみたいに、心から言葉がこぼれていった。そして仕事なんて関係ないのに、何いらないフォローしてるんだ、俺は。
「・・・好きなことを仕事に出来るのって本当に有り難いですよね。」
───そうだよ、仕事の為のリサーチだよね。それ以外ないよね。
衣緒は少し胸が痛んだ自分に気がつかないふりをした。
「・・・そうだな。皆が皆好きな仕事できる訳じゃないから。」
───仕事は関係ない、なんて、いきなりそんなこと言ったら引かれるよな・・・。それならあのフォローでよかったのかな。
今度は少し気まずい沈黙が流れた。
「ビロリロリロリー♪」
陽気な電子音がその沈黙を破った。
「浴室乾燥、終わったみたいだ。」
───いつの間にそんな時間経ってたんだろう。
「ありがとうございます。私着替えて、失礼しますね。麦茶までごちそうさまでした。」
───実は話に夢中で飲んでないけど・・・。
「電車、動いてるか調べるよ。」
鈴太郎はスマホを取り出した。
「あ、大丈夫です、ガラケーでも見られます。」
衣緒が携帯を手に取ると彼は画面を見たまま言った。
「・・・あ、まだ止まってる。つぶやき情報だと運転再開の見通しが立ってないらしい。公式サイトよりも普通の人のつぶやきのが情報早いんだよな。」
「そうですか・・・。でもとりあえず、外でタクシー待ってみます。来なかったらタクシー会社に電話して・・・。」
鈴太郎は携帯をリュックにしまう彼女に目線を移すと先程から心にあった言葉を思い切って口にした。
「・・・もし嫌じゃなかったら、泊まっていったら?」
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