雨宿りびより

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「朝までミーティング、では・・・?」 「正直30代には徹夜はきついな。俺だけかな。」 鈴太郎はそう言って両目をつぶって手で覆い、ぐるぐるとマッサージするように動かす。 「私もそうですよ。学生の頃は2日間連続完徹とか出来たのに。」 「それは、なんで徹夜したんだ?」 「授業で、グループでプレゼンすることになってて、そのスライドを私が作ったんです。皆の意見と資料をまとめて。そうしたら満足いくものが出来たけれど、寝る時間なくて。本当、昔から要領悪いんですよね。でも、グループの代表でプレゼンした子達が先生やクラスメイト達に褒められてて嬉しかったです。授業終わった後も追いかけられて『すごかったね!』って言われてて。」 その時のことを思い出して微笑みながら話す衣緒を鈴太郎は難しい顔をして見ていた。 「・・・その頃からそうなんだな。」 「!?」 彼の抑えたような声に少しの緊張が走る。 「月曜日のミーティングの時の今城(いまぎ)さんのプレゼン、あの企画彩木さんのでしょ?」 先程の眠そうな口調とは打って変わった毅然とした口調で言う。 「いえ、あれは今城さんの企画です。私は今城さんがお休みに入られる前に説明された通りにスライドを作っただけです。」 彼の見透かすような視線に捕らえられ心が強張るが、なんとか目を逸らさずに否定する。 「でも、今城さんは旅行から帰って月曜当日に出てきてミーティングでスライドに書かれた文を読んだだけだった。質問にも答えられなくて彩木さんに聞いてただろ?」 「・・・。」 事実を淡々と述べられ思わず目を逸らしてしまう。 「説明って大まかなものだったんじゃないのか?実際に詳細を詰めたり、予算を考えたり、資料を集めたりして、スライドの構成を考えて、皆を納得させるような企画に練り上げたのは彩木さんなんじゃないか?」 「・・・。」 衣緒はついにうつむいてしまった。図星だったのだ。
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