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そのミーティングでは、社員は一人一つ新商品の企画を出さなくてはならなかった。雑貨チームの社員で衣緒より3歳年上の今城真海はその企画として、『写真立てとかかなー。今までにない機能的な。』とだけ言ってプレゼン資料の作成を衣緒に任せて早めの夏休みで海外旅行に出掛けてしまったのだ。
どのような機能を持った写真立てにするかとか、素材、デザイン、予算等は衣緒が経験がないなりに考えたものだった。
「彩木さん、毎日遅くまで残ってスライド作ってたよな。あの商品もプレゼン資料も皆から評価されて、これでいこうってなって、今城さんが皆に『すごいな。』って言われてたけど、本当は・・・。」
「・・・。」
目頭がツンとして、まずい、と衣緒は思った。
「残業してる時、俺が大丈夫か?って聞いたら、頑なに『大丈夫』って言い張ってたけど、本当は大変だったろ?ミーティングまで通常の業務だってあったし。」
「・・・私、いつも仕事遅くて迷惑かけてるから、頼まれたことはやらなくちゃって・・・。資料作ってる時、葉吉さんが過去の関連資料をメールで送って下さったので、とても助かりました。・・・それに学生の時も今回も、私が作った資料を評価して頂いたことは確かですから・・・私は嬉しいです。・・・すみません。」
話しているうちに彼女の目はみるみる潤んでいき、今にも泣き出しそうだった。
「・・・ごめん。」
鈴太郎はテーブルの向こう側から衣緒の方に移動してきた。
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