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「・・・ティッシュ・・・。」
衣緒は自分のリュックをごそごそし始めた。
「あるよ。」
鈴太郎は北欧系の柄のカバーがかけられたティッシュを差し出した。
「ありがとうございます。でも、持ってるので大丈夫です。」
「使えって。仕事のことも今日のこともそうだけど、もっと人を頼れって。彩木さんのこと迷惑なんて思ったことないよ。いてくれていつも助かってる。」
───今日だって楽しいし。
「・・・。」
その言葉を受け取った彼女の目に新たな涙が浮かんできた。
「!?」
───なんか俺、慰めようとすればする程泣かしてる気がする。抱きしめたい衝動に駆られてるけど・・・まずいよな・・・。コンプライアンスがどうとかじゃなくて、彼女の気持ちを考えると・・・。自分を泣かした上司に抱きしめられるなんて。
「あの、私、泣いてますけど、嬉しくて泣いてるので・・・。」
「え、そうなのか?」
───俺に責められたからじゃないんだ。じゃ、抱きしめても・・・?いや、だめだろ・・・。
「その、何とか落ち着くようにするので・・・。」
そう言いつつも涙は湧き水のように止めどなく流れている。
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