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「俺、いない方がいい?」
「えっと・・・。」
───落ち着くのを待っててください、とも言えないし、もちろんどこかに行ってください、とも言えないし・・・こんな姿見られて恥ずかしい。
「あ、寝ようとしてたんだよな。俺、このソファで寝るから、彩木さん寝室でゆっくり落ち着いて、そのままベッドで寝たらいいよ。」
───本気でまずい。このままここに一緒にいたら、触れてしまう。
「・・・大丈夫です。私ここで寝かせて頂きますので。葉吉さんが寝室でお休みになってください。」
衣緒は目線を下に移し、手で床を撫でた。
「ここって床!?」
「・・・クッションと心地良いラグもあってばっちりです。・・・家でも床で寝ちゃうことたまにあるので。」
「いや、ベッドで寝・・・。」
「私、寝付きの良さ自信あるんです。世界記録保持者かも。」
彼女は目に涙を溜めたまま有無を言わさぬ口調で鈴太郎の言葉を遮って、普段の彼女の動きからは想像出来ないような早業でコテン、と横になってしまった。
「・・・。」
鈴太郎があっけにとられたまま1分ほどが経った。
───え?本当に寝ちゃった?
彼は衣緒の顔を見つめた。絶賛泣き中だったため鼻が赤くなっていて、目尻には涙の雫が残っていた。
───・・・だから、もっと甘えろよな・・・。
吸い寄せられるように彼女の左目の涙を右手の人差し指を曲げてぬぐった。
指先に彼女の体温を感じた瞬間、なんとその瞳が開いた。
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