雨宿りびより

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衣緒は突然の展開に驚いていたことに加え、車に乗せられる時に背中に触れた鈴太郎の手の感触と、シートベルトを締めてくれる時に顔が接近したことにどぎまぎしてしまい、口を開けずにいた。 行き止まりの道に入ると彼はタオルを渡してくれた。 「あ、ありがとうございます。葉吉さんが先にふいてください。」 「俺は一瞬しか外出てないから。」 「でも、私のせいで濡れてしまって。」 「俺はいいから早くふいて。」 衣緒はじっと鈴太郎を見ると急に体を伸ばし、思いきって彼の頭をポンポンとふいた。 「・・・。」 驚いていたものの迷惑そうではなかったので、肩や腕も同じようにふいたが、顔や胸まで触れる勇気はなかった。 「・・・ありがとうございます。乗せて頂いて。シート濡らしてしまってすみません。」 自分をふくと言った。 「いいよ。」 鈴太郎は彼女の礼と謝罪に一言で返しながら車を発進させた。 怒ってはいないようだったが、あまり話したくないような雰囲気だったので、衣緒はそれ以上言葉を発するのをやめ窓の外を眺めていた。 しかし、車は普段歩いている駅までの道とは違う道を走っていて、店舗やビルが少なくなってきたように見えたので遠慮がちに聞いてみた。 「・・・あの、駅って、車で行くとこっちからなんですか?」 「駅行っても電車止まってるよ。」
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