お祭りびより

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「これ、髪、どうなってるんですか?ねじってる?」 そう言って躊躇(ちゅうちょ)なく髪を触ってくる。 今日はサイドで一つに結んでいて、襟足側になる髪の一部をねじってから一緒に結んでいた。 「こ、この部分をねじって結ぶと緩みにくくなるんです。」 「へえ~。『女子力』ってやつですね。」 「そんなことないです。ピンもいらなくてすぐ出来るし・・・。」 「俺は、そういうの好きだけど・・・。」 彼はそう言ってねじり初めの右耳付近からヘアゴムで結んである左耳付近まで、ねじった髪をゆっくりなぞっていく。 「・・・。」 ───こ、これ、どうしたらいいの!?よけたら感じ悪い!? と、そこに本を探しに来たと思われる年配の会社員らしき男性が現れた。それに気付いた衣緒は体をわずかに引いた。 男性はきょろきょろとして二人の姿を見ると驚き『こっちじゃないな。』という顔をとりつくろい離れて行った。 「今一瞬、ホッとしたでしょ?」 新貝が近づき耳元でささやく。 「!!!」 「『私好きな人いるのにこんなことされても困る 』って顔に書いてありますよ。」 「!!!」 優しく笑いながら言われ、思わず顔を触ってしまう。 「今日はこの辺にしときます。嫌われたら嫌だから。」 新貝は衣緒の髪からすっと手を離して距離をとった。 「・・・。」 「でも、関係ないです。彩木さんに好きな人がいても、彩木さんのことを好きな人がいても・・・俺のことを好きな人がいても。」 「!!!」 ───まさか、玉川さんの気持ち、気づいてる? 「俺は自分の気持ちのままに行動するのみです。ぼやっとしてたら、彩木さん好きな人に気持ち伝える前に俺のこと好きになっちゃうかもしれませんよ?」 爽やかな顔で不敵な笑みを作りつつ出口の方に歩き出す。 「それでは。」 「・・・。」 唖然として彼の姿が見えなくなるまで見送り、ふと気づいて時計を見ると結構な時間だった。 新貝にとってもらった本を抱えて貸出しカウンターに向かった。
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